導入しやすい熱中症対策事例紹介

職場における熱中症予防対策に取り組む各企業の参考となるよう、熱中症予防対策を行う企業の取り組みを収集し、令和3年4月20日 基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱」より改変の上引用し、WBGT値実測結果を加えて事例としてまとめました。ここでは、取材協力いただいた企業より、現場でも比較的容易に取り組め、活用可能な事例を取りまとめてご紹介します。熱中症のリスクの低減を図るため、ご活用ください。
 なお、“プレクーリング”及び”管理体制の整備”については、令和3年4月30日改正「令和3年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱」より抜粋しております。

目次:分類別熱中症対策事例

1. 作業環境管理

①WBGT値の実測

熱中症対策を行うためには、作業場所の暑熱状況を把握することが第一です。このためには、WBGT 指数計を用いて WBGT 値(暑さ指数)を測定し、暑熱状況を評価する必要があります。 また、暑さは場所によって異なりますので、測定は一ヶ所だけで行うのではなく、実際の作業現場ごと に測定し、評価することが重要となります。 ここでは、実際に作業現場にて WBGT 値を測定した結果を示します。この結果を参考に、皆様の現場 においても WBGT 値を測定し、暑熱状況を評価してみましょう。

②WBGT基準値に基づく評価等

把握したWBGT値が、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、冷房等により当該作業場所のWBGT値の低減を図ること、身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業に変更すること、WBGT基準値より低いWBGT値である作業場所での作業に変更すること等の熱中症予防対策を作業の状況等に応じて実施するよう努めること。それでもなお、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、熱中症予防対策の徹底を図り、熱中症の発症リスクの低減を図ること。ただし、WBGT基準値を超えない場合であっても、WBGT基準値が前提としている条件に当てはまらないとき又は着衣補正値を考慮したWBGT基準値を算出することができないときは、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合と同様に、熱中症予防対策の徹底を図らなければならない場合があることに留意すること。
上記のほか、熱中症の発症リスクがあるときは、必要に応じて熱中症予防対策を実施することが望ましいこと。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

暑熱リスクや作業環境に応じた対策

  • 日陰がない炎天下の屋外建築工事場所は熱中症リスクが高いので、日陰を作るなどの予防措置をとる。(建設業)【写真1】
  • 屋外建築現場のうち、特に1)土工事や山留工事、2)鉄板が敷いてある場所などの蓄熱場所、3)基礎工事や外構工事、屋外給排水工事で熱中症のリスクが高くなることが予測されるので、日陰を作るなどの予防策を講じている。(建設業)
  • 炎天下のスラブ上などでは、蓄熱・輻射熱等で熱中症が発生するおそれがある。スラブ上で作業する場合には、特に注意するよう声掛けや指示をして準備を怠らないよう作業員に伝えている。(建設業)
  • 鉄筋は熱を帯びた状態で運搬・搬入され、かつ、そのまま炎天下に保管されている。コンクリート打設された地面の上での作業は通常でもかなり暑い環境下にある屋外作業となるため、夏場には特に熱中症予防に留意している。(建設業)【写真2】
  • 高層ビル建築現場など、1つの建物でも高層階と低層階での作業環境が大きく異なる。これを前提として、現場巡視及びWBGT値の測定を行っている。(建設業)【写真3】
  • 養生シートに囲まれた通気が悪い工事現場やアスベスト撤去等の防護服を着用する作業、タンク等槽内清掃作業などを、熱中症ハイリスク場所と特定し、注意喚起している。(製造業)

WBGT値の測定及び表示・通知など

  • 作業場所ごとに、職長・安全衛生責任者がWBGT指数計でWBGT値を1日4回(朝礼後、10:30(休憩後)、13:30(午後配置後)、15:30(休憩後))測定している。(建設業)
  • 作業場所ごとに、協力会社の責任者が作業開始前及び各休憩後の作業開始前にWBGT値測定を行い、作業者に通知している。(建設業)【写真4】
  • 代表地点だけでなく作業場所ごとに、管理者がWBGT指数計によりWBGT値を測定している。(建設業)
  • WBGT値は、元請が作業場所ごとにモニタ表示する現場もあるが、下請でも職長がWBGT指数計で随時測定し、現場の作業者に注意を与えている。(建設業)
  • 管理者(安全衛生役員及び安全衛生担当者)が、SNSのグループ発信機能を用いて、熱中症の危険度などを労働者全員の携帯電話に即時に一斉通報している。また、携帯電話の翻訳アプリにより、外国人労働者にも母国語で伝えている。(建設業)

WBGT値が高い場合の対応等

  • 作業に先立ち、“炎天下での作業を中止”“作業中止”とするべきWBGT値の基準を定め、運用している。(建設業)【写真5】
  • WBGT値が高い場合は、係長・職長が判断して、負荷の高い作業は作業時間を短縮する又は涼しい時間帯に作業時間を変更するなどしている。(製造業)
  • WBGT値が高い場合は、職長の判断で元請に報告・相談し、工程を調整した上で、熱中症リスクを下げるために身体作業強度の低い作業に変更している。(建設業)
  • WBGT値が高い場合は、現場の責任者や管理者の判断で、休憩時間の頻度を増やすように調整する。(建設業)
  • WBGT値が高い場合は、こまめに水分・塩分補給するように指示を出している。(建設業)

③WBGT値の低減等

次に掲げる措置を講ずること等により当該作業場所のWBGT値の低減に努めること。

WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある作業場所(以下単に「高温多湿作業場所」という。)においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けること。
屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けること。
高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設けること。また、屋内の高温多湿作業場所における当該設備は、除湿機能があることが望ましいこと。

なお、通風が悪い高温多湿作業場所での散水については、散水後の湿度の上昇に注意すること。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

WBGT値低減のための施設、設備など

  • 屋外作業では、日陰を作るために簡易の屋根の取り付け、日陰を確保している。(建設業)【写真6】
  • グリーンカーテン、スポットクーラー、ミスト扇風機、業務用扇風機などを設置している。(建設業、運送業:港湾荷役業)【写真7,8】
  • スポットクーラーは冷風が出るが、本体から熱が発生することや、消費電力が大きいことから、排熱がなく、消費電力が少ない低消費電力冷風機を多数設置している。(運輸業)
  • 解体工事は屋根のない屋外作業がほとんどであり、解体用作業重機は運転席にクーラーがついているものを採用している。(建設業)【写真9】
  • 運送業において積み下ろし先で休憩場所がない場合、クーラーをかけたトラックの運転席を休憩場所とするなど、臨機応変に対応するよう指導している。(運輸業、建設業)

④休憩場所の整備

労働者の休憩場所の整備等について、次に掲げる措置を講ずるよう努めること。

高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を設けること。また、当該休憩場所は、足を伸ばして横になれる広さを確保すること。
高温多湿作業場所又はその近隣に氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備を設けること。
水分及び塩分の補給を定期的かつ容易に行えるよう高温多湿作業場所に飲料水などの備付け等を行うこと。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

休憩場所の施設

  • 作業場所が広く、休憩場所が遠いので、作業場所近くの屋内にビニールハウス(スポットクーラーを常時稼働させている)を設置して作業中の休憩場所としている。(運輸業)【写真10】
  • 高層大型ビルの解体作業では、現場の事務所脇に休憩場所の建屋を設け、また別に解体中のビルの利用できる場所にも休憩場所を設置し、更に臨時に作業場所近辺の木陰で臨時に休憩できるようにするなど、休憩場所を複数ヶ所設置している。(建設業)【写真11】
  • 休憩場所を作業現場の敷地内に設けることができない場合は、現場外の近隣にあるマンション等の一室を借り上げて休憩場所として利用できるようにしている。(建設業)
  • 狭い現場であっても建設物傍のスペースに、アウトドア用テントや足場の材料を利用し、支柱に遮光ネットを張って日陰を確保できるようにした仮設小屋を設置し、休憩場所としている。足場資材を利用した仮設小屋は、簡単に設置でき、広さは1間四方程度からなど柔軟性が高い。(建設業)【写真12】
  • 基礎工事や外構工事など、常設の休憩場所を設置できないような環境では熱中症の発症リスクが高いと考えられることから、敷地の一部にワイヤーと遮光ネットを用いた簡易的な休憩場所を設置している。高さを一定程度確保することで、重機作業時にも支障なく使用可能である。折りたたむことで強風時の対策も可能である。(建設業)【写真13,14】
  • 小規模な現場においても、可能な範囲で休憩場所の設置に努め、例えば建物脇にプレハブ休憩所を設置したり、建設中の建物の中に設置したりするなど工夫している。(建設業)【写真15】

【写真13、14】休憩場所を確保
(一定の高さを確保して日よけとなる遮光ネットを設置)

休憩場所の設備など

  • 休憩場所には、業務用扇風機、ミスト扇風機、製氷機、冷水器、長椅子、長机を設置している。(建設業)【写真16,17,18】
  • 休憩場所にはエアコン、スポットクーラー、扇風機、大型送風機、冷蔵庫、製氷機、ウォータークーラー、ベンチや椅子を設置している。休憩場所脇には飲料自動販売機も設置している。(建設業、運輸業:港湾運送業)【写真19,20】
  • 排水施設を利用できる休憩場所では、散水パイプを利用して場内を冷やしている。休憩場所の湿度が上がるのと、床が滑りやすいので注意が必要である。(建設業)
  • 排水施設を利用できる休憩場所では、シャワー場を設け、身体を冷却できるようにしている。(建設業)

休憩場所の常備品

  • 塩飴、保冷剤、経口補水液、体温計、血圧計を会社で購入して常備している。(建設業)【写真21,22,23,24】
  • 保冷剤、経口補水液、塩分入りゼリー飲料、塩飴、非接触式体温計を常備している。(建設業)【写真25】

2. 作業管理

①作業時間の短縮等

作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮すること、身体作業強度(代謝率レベル)が高い作業を避けること、作業場所を変更すること等の熱中症予防対策を、作業の状況等に応じて実施するよう努めること。

(厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

作業時間帯の変更

  • 公表されている翌日の暑さ指数の予測値を見て、作業時間変更を元請に依頼・提案をしている。(建設業)

休憩時間

  • WBGT値が高い場合は、現場の状況に応じて、現場責任者の判断で昼休憩の延長(11時~14時)や休憩頻度を増やすなどの対応をしている。(建設業)
  • WBGT値が高い場合は、休憩時間を総計30分延長している。(建設業)
  • WBGT値が高い場合は、休憩時間を分散する。例えば、午前休憩(30分)は通常:10:00~10:30であるが、高温の場合は9:00~9:10、10:00~10:10、11:00~11:10と3回に分散して休憩させている。(建設業)

作業内容の変更

  • 熱中症予防のため、従業員個々人の年齢、熟練度、体調、暑熱順化等に応じて、暑い昼間の作業を避けるなどの、作業内容の組み換えを実施している。(建設業)
  • WBGT値が高い場合は、職長の判断で元請に報告・相談し、工程調整した上で、リスクの低い作業に変更している。(建設業)
  • WBGT値が高い場合は、負荷の高い作業は人員を増やす又は涼しい時間帯に作業を変えるなど、係長・職長が配慮している。(製造業)
  • 作業中の体調悪化等を想定し、元請と調整の上、極力、一人作業がないように作業配置を行っている。(製造業)
  • 単独作業はリスクが高いので、特に高齢者や持病の有る労働者については二人一組で作業するようにしている。(建設業)

②暑熱順化

高温多湿作業場所において労働者を作業に従事させる場合には、暑熱順化(熱に慣れ当該環境に適応すること)の有無が、熱中症の発症リスクに大きく影響することを踏まえ、計画的に、暑熱順化期間を設けることが望ましいこと。特に、梅雨から夏季になる時期において、気温等が急に上昇した高温多湿作業場所で作業を行う場合、新たに当該作業を行う場合、又は、長期間、当該作業場所での作業から離れ、その後再び当該作業を行う場合等においては、通常、労働者は暑熱順化していないことに留意が必要であること。

(出典  厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

熱への順化

  • 暑熱順化する方法や暑熱順化を失わないための方法などについて、独自の資料・ポスターを作成している。これらの資料は元請事業所の協力会社の団体を介して他社にも普及させている。(建設業)【写真26,27】
  • 暑くなる前に発汗を促すような運動を行うなど、暑さに体を慣らす工夫をするよう指導している。(建設業)

【写真26.27】教育資料:熱中症未然防止キャンペーン

③水分及び塩分の摂取

自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあること等に留意の上、自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を指導するとともに、労働者の水分及び塩分の摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視における確認等により、定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図ること。特に、加齢や疾患によって脱水状態であっても自覚症状に乏しい場合があることに留意すること。
なお、塩分等の摂取が制限される疾患を有する労働者については、主治医、産業医等に相談させること。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

水分・塩分の摂取

  • 水分・塩分の摂取記録をとっている。(建設業)【写真28】
  • 1時間に2回程度水分(1回250mL以上)・塩分を摂取するよう指導している。(建設業)
  • 給水スペースとして、風雨を防ぎ電源を確保できるガードマンボックスを設置し、その中にウォーターサーバー、塩タブレット、体拭きシート等を設置している。(建設業)【写真29,30】
  • 作業中の建屋の各フロアにはクーラーボックスを置いて、作業員が持参した飲み物を入れられるようにしている。(建設業)【写真31】
  • 休憩場所には、塩飴・塩タブレット、カキ氷、スイカ、アイスキャンディー等を用意している。(建設業)【写真32,33,34】

プレクーリング等

WBGT値が高い暑熱環境の下で、作業強度を下げたり通気性の良い衣服を採用したりすることが困難な作業においては、作業開始前にあらかじめ深部体温を下げ、作業中の体温上昇を抑えるプレクーリングも行われており、体表面を冷却する方法と、冷水や流動性の氷状飲料などを摂取して体内から冷却する方法とがある。必要に応じて作業開始前や休憩時間中のプレクーリングを検討すること。

(出典 厚生労働省「令和3年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要項」)

  • 流動性の氷状飲料を導入している。事業所以外でも、冷凍設備のある車両に設置することで活用している。短時間でクールダウンを実感できたという声もある。(運輸業)
  • 休憩場所の冷蔵庫で凍らせたペットボトルを保冷し、休憩時間に手で握ることで身体を冷やし、また、熱中症発生時の保冷剤として利用できるように常備している。(建設業、運輸業:港湾業)【写真35】
  • 休憩時間に水で冷やしたタオルや凍らせたタオルを配っている。(建設業)【写真36】
  • 厚生施設の社員浴場シャワーを、身体を冷やすため勤務時間内に利用できるようにしている。(製造業)

④服装等

熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。また、これらの機能を持つ身体を冷却する服の着用も望ましいこと。なお、直射日光下では通気性の良い帽子等を着用させること。また、作業中における感染症拡大防止のための不織布マスク等の飛沫飛散防止器具の着用については、現在までのところ、熱中症の発症リスクを有意に高めるとの科学的なデータは示されておらず、着衣補正値のWBGT値への加算は必要ないと考えられる。
一方、飛沫飛散防止器具の着用は、息苦しさや不快感のもととなるほか、円滑な作業や労働災害防止上必要なコミュニケーションに支障をきたすことも考えられるため、作業の種類、作業負荷、気象条件等に応じて飛沫飛散防止器具を選択するとともに、感染防止の観点から着用が必要と考えられる作業や場所、周囲に人がいない等飛沫飛散防止器具を外してもよい場面や場所等を明確にし、関係者に周知しておくことが望ましい。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

服装等

  • 服装メーカーと相談しながら、速乾性があり熱がこもらない制服の改良等の工夫をしている。(運輸業)
  • 会社ネームやロゴ入りのファン付き作業服を、従業員及び下請作業員分にも無償で支給した。(建設業)【写真37,38】
  • 保冷剤付きベストを使用している。(製造業)
  • 炎天下では、首筋を保護するためヘルメットの背中側に装着する日よけ用の布を着用させている。(建設業)【写真39】
  • ヘルメットに首筋を日射から保護するための日よけ用の布を着用させている。(建設業)

⑤作業中の巡視

定期的な水分及び塩分の摂取に係る確認を行うとともに、労働者の健康状態を確認し、熱中症を疑わせる兆候が表れた場合において速やかな作業の中断その他必要な措置を講ずること等を目的に、高温多湿作業場所での作業中は巡視を頻繁に行うこと。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

作業中の巡視

  • 管理者が一定の時間に職場巡視する。その際に、声掛けを行い、体調を確認している。疾患(持病)のある人、外国人(中国、ベトナム、インドネシア)、高齢者、新人には特に注意している。従業員の声を聴いて現場改善を行っている。(建設業)
  • 高層ビル建築現場では、高層階と低層階の現場の状況が大きく異なる場合があり、熱中症予防に必要な措置も異なることがあるので、いずれの階層も漏れなく確実に巡視するようにしている。(建設業)

3. 健康管理

①健康診断結果に基づく対応等

労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第43条、第44条及び第45条の規定に基づく健康診断の項目には、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全等の熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患と密接に関係した血糖検査、尿検査、血圧の測定、既往歴の調査等が含まれていること及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の4及び第66条の5の規定に基づき、異常所見があると診断された場合には医師等の意見を聴き、当該意見を勘案して、必要があると認めるときは、事業者は、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずることが義務付けられていることに留意の上、これらの徹底を図ること。
また、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患の治療中等の労働者については、事業者は、高温多湿作業場所における作業の可否、当該作業を行う場合の留意事項等について産業医、主治医等の意見を勘案して、必要に応じて、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずること。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

産業医の指示など

  • 健康診断結果で異常値がある有所見者を熱中症ハイリスク者とみなし、業務上の配慮について産業医の指示を仰いでいる。(建設業)
  • 既往症による産業医の配置考慮の指示を、職長に連絡している。高齢者、現場に慣れていない新規入所者についても同様である。要配慮該当者については朝、休憩時(10:00、12:00、14:00)に、『体調はどうか?』『食生活はどうか?』『酒を飲み過ぎないように!』などの声掛けを行っている。(建設業)

②日常の健康管理等

高温多湿作業場所で作業を行う労働者については、睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることに留意の上、日常の健康管理について指導を行うとともに、必要に応じ健康相談を行うこと。これを含め、労働安全衛生法第69条の規定に基づき健康の保持増進のための措置を講ずるよう努めること。
さらに、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患の治療中等である場合は、熱中症を予防するための対応が必要であることを労働者に対して教示するとともに、労働者が主治医等から熱中症を予防するための対応が必要とされた場合又は労働者が熱中症を予防するための対応が必要となる可能性があると判断した場合は、事業者に申し出るよう指導すること。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

チェック表等による健康確認

  • 作業員の健康状態を、作業開始前や昼休み・巡視時等にチェックシートで確認している。『飲酒はどのくらいしたか、食事はしたか、何時間寝たか』など熱中症対策を含む事項を記載させている。記載したチェックシートは責任者が確認している。(建設業)【写真40】
  • 作業員には適正配置通知書(一般社団法人全国建設業協会統一様式)を必ず提出させている。ここに記載された健康管理上の情報により作業開始前に責任者が内容を確認して就業の配慮をしている。(建設業)
  • 危険作業に関する就業制限を設け、各協力会社へも通知している。年齢、血圧、持病などを記入した作業員名簿を工事初日の作業前に提出させ、責任者が内容確認、判断の上、作業を許可している。(製造業)
  • 高血圧と診断されている作業員は、毎朝入場時に血圧測定し、記録している。(建設業)

③労働者の健康状態の確認

作業開始前に労働者の健康状態を確認すること。
作業中は巡視を頻繁に行い、声をかける等して労働者の健康状態を確認すること。
また、複数の労働者による作業においては、労働者にお互いの健康状態について留意させること。
休憩場所等に体温計、体重計等を備え、必要に応じて、体温、体重その他の身体の状況を確認できるようにすることが望ましいこと。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

労働者の健康状態の確認

  • 毎日、朝の挨拶や朝礼で健康状態を確認している。その際、単に『朝食を食べましたか?』『昨夜はよく眠れましたか?』というような単純に「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、『朝食に何を食べましたか?』、『昨夜は何時に寝ましたか?』のように、より対話ができるよう問い方を工夫している。(建設業)
  • 工事グループ毎に作業前ミーティングを必ず行い、体調の自己申告やお互いの顔色のチェックを行っている。(製造業)
  • 運行管理者は、作業開始前、及び朝礼・昼礼・夕礼・夜礼・深夜礼の点呼時に健康状態の確認を行っている。(運輸業)
  • 元気な挨拶等のコミュニケーションが大事だという認識のもと、巡視時や朝礼時を含め、作業員の体調の変化をきめ細かく責任者が観察している。また、作業員同士が相互確認し、異変に気付いたら直ちに責任者へ報告するよう指導している。(運輸業:港湾運送業)
  • 工場長が1時間おきに巡視を行っている。(建設業)
  • 管理者が職場巡視する際に、作業者の顔色を確認し、声掛け指導や従業員の声の汲み取りなどで体調確認を行っている。(建設業)
  • 単独作業はリスクが高いので、特に高齢者や持病の有る作業者については二人一組で作業するようにしている。(建設業)

4. 労働衛生教育

①労働衛生教育

労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、適切な作業管理、労働者自身による健康管理等が重要であることから、作業を管理する者及び労働者に対して、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行うこと。
(1)熱中症の症状(2)熱中症の予防方法(3)緊急時の救急処置(4)熱中症の事例
なお、(2)の事項には、1から4までの熱中症予防対策が含まれること。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

外部研修受講、資格など

  • 経営者のみならず職長や社員も、建設業労働災害防止協会が実施する「建設業等における熱中症予防指導員研修」を受講して、熱中症予防指導員研修修了書を取得している。(建設業)【写真41】

文書化した情報など

  • 熱中症対策などについて、独自作成した資料・ポスターなどの教育資料を充実させている。これらの資料は協力会社の団体を介して他社にも普及させている。(建設業)【写真42,43,44,45】
  • 元請ゼネコンが作成した安全管理指導手順書を作業者に配布し、安全徹底を図っている。(建設業)
  • 外国人労働者にもそれぞれ母国語の安全管理指導手順冊子を配布し、安全徹底を図っている。(建設業)【写真46,47-1,47-2】
  • 建設業労働災害防止協会の資料を引用して熱中症教育の充実を図っている。教育用ビデオも併用している。(建設業)【写真48,49】
  • 熱中症対策に関するガイドライン・マニュアルを作成し、全社員に対する熱中症への注意喚起や、熱中症発生時の報告フローについての教育に利用している。(運輸業)

【写真43.44.45】教育資料:熱中症未然防止キャンペーン

【写真46.47-1.47-2】「作業員基本教育」冊子
(日本語・中国語・ベトナム語‥)

所内講習など

  • 夏前に実施している安全大会で、熱中症予防のために独自に作成した資料・ポスターを用いて全社員に教育している。(建設業)【写真50,51】
  • RC(レスポンシブル・ケア)※1 活動を熱中症対策に組み込み、資料を工事業者にも配布している。(製造業)
  • 毎月開催している所内の災害防止協議会で、熱中症に対する危険予防対策については厚生労働省のデータ等を用いて教育している。また、教育内容が伝わっているかどうか、内容伝達報告書に署名させ、確認している。(建設業)
  • 職長教育で、WBGT指数計の取り扱い方、WBGT値の基礎知識と対処方法、熱中症が疑われる症状を発見した場合の元請との連携、コロナ禍での熱中症予防対策、作業員への指導方法などについて徹底した教育を行っている。(建設業)
  • 作業員教育では、熱中症のメカニズムと予防方法、熱中症予防の安全衛生教育、毎日の体温の記録、就寝時間6時間の確保などを徹底して教育している。(建設業)
  • WBGT基準値を全員が把握し、答えられるように教育している。例えば、左官作業は中程度代謝率に相当し、暑熱順化者28℃、暑熱非順化者26℃が基準値であるなど。(建設業)

※1 「RC(レスポンシブル・ケア)」とは、化学物質を扱う企業が、その研究開発から製造、流通、使用、廃棄に至るすべてのライフサイクルにおいて、自己責任と自己決定の原則に基づいて安全や健康、環境への影響に配慮し、対応を確保する取り組みのこと。1)環境保全、2)保安防災、3)労働安全衛生、4)物流安全、5)化学品・製品安全、6)コミュニケーションの6項目を軸とした活動を進めている。

5. 救急措置

①救急措置

緊急連絡網の作成及び周知労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、労働者の熱中症の発症に備え、あらかじめ、病院、診療所等の所在地及び連絡先を把握するとともに、緊急連絡網を作成し、関係者に周知すること。
熱中症を疑わせる症状が現われた場合は、救急処置として涼しい場所で身体を冷し、水分及び塩分の摂取等を行うこと。また、必要に応じ、救急隊を要請し、又は医師の診察を受けさせること。

(出典 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)

熱中症発症又はその疑い時の措置など

  • “こむら返り”や“手足のしびれ”など、現場の判断では軽度の熱中症あるいは熱中症が疑われる症状であっても、躊躇なく救急車を要請するようにしている。救急搬送までに時間がかかることも想定し、待機場所の確保に努めている。(建設業)
  • 軽度の熱中症を疑うようなことがあり、現場で回復した作業員については、帰宅後20時位に責任者が連絡し、その後の経過を確認している。(建設業)

6. 管理体制の整備

①管理体制の整備

事業者、産業医、衛生管理者、安全衛生推進者又は衛生推進者が中心となり、熱中症予防対策について検討するとともに、事業場における熱中症予防に係る責任体制の確立を図る。
現場で作業を管理する者等、衛生管理者、安全衛生推進者等以外の者に熱中症予防対策を行わせる場合は、教育研修を受けた者等熱中症について十分な知識を有する者のうちから、熱中症予防管理者を選任し、同管理者に対し、業務について教育を行う。

(出典 厚生労働省「令和3年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要項」)

経営者

  • 経営者が、建設業労働災害防止協会の「建設業等における熱中症予防指導員研修」を受講することにより、熱中症予防に関して理解している。(建設業)
  • 経営者がゼネコン開催の「職長・安全衛生責任者教育講師養成講座」を受講し、資格を取得している。(建設業)
  • 管理職は健康診断結果について産業医の意見を聞きながら、熱中症予防に対応している。(運輸業)
  • 工場長が自ら1時間おきに職場巡視を行っている。(建設業)

監督職など

  • 職長が、建設業労働災害防止協会の「建設業等における熱中症予防指導員研修」を受講している。社員にも受講を推奨している。(建設業)【写真52】
  • 現場の熱中症予防対策は係長・職長が担っている。(製造業)
  • 特に小規模の現場では、現場監督の判断を優先し、現場に適した熱中症予防対策を実施している。(建設業)
  • 職長に休憩時間の変更等の権限を与え、個人個人のきめ細かな体調管理、休憩時間の管理を行っている。(建設業)

コミュニケーション

  • 管理者の方から積極的に朝の出社時の挨拶や朝礼等で、日頃から密にコミュニケーションを取ることにより、従業員の体調管理を徹底するとともに、従業員が自らの体調不良を申告しやすい雰囲気になるような関係性、職場作りを心掛けている。(建設業)
  • 管理者が職場巡視する際に、声掛け指導、従業員の声の汲み取りを行っている。特に疾患(持病)のある人、外国人、高齢者、新人には留意している。(建設業)
  • 朝礼後のツールボックスミーティングにおいて、休憩の重要性や体調不良時に申し出ることが大切だと共有している。(建設業、製造業)
  • 管理者(安全衛生役員及び安全衛生担当者)が、SNSのグループ発信機能を用いて、熱中症の危険度などを作業者全員の携帯電話に即時に一斉通知している。その際、携帯電話の翻訳アプリにより、外国人労働者にも母国語で伝えられるようコミュニケーションツールを工夫して活用している。
  • 熱中症対策に関するガイドライン・マニュアルを作成し、全社員に周知している。(運輸業)

試験導入

  • 暑くなる前に新技術情報を得て試験的に導入し、その結果、効果があれば採用することにしている。(製造業)
  • 積極的に熱中症対策情報にアンテナを張り、効果がありそうであれば採用し、進めていくようにしている。(建設業)【写真53】
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