企業別取組内容(令和3年度)

職場における熱中症予防対策に取り組む各企業の参考となるよう、熱中症予防対策を行う企業の取組を収集し、事例としてまとめました。ここでは、小規模な事業所や現場でも比較的容易に取り組め、活用可能な事例をご紹介します。従業員の皆さまの熱中症のリスクの低減を図るため、ご活用ください。
各企業の詳しい取り組み内容はPDFでもご覧いただけます。

1目次:企業が取り組む熱中症対策

(1)業種:建設業(とび工事業・土工・コンクリート工事業)

本社所在地:神奈川県藤沢市
取材地:同上
従業員数:50~99名
事業概要:解体工事業、建築工事業(とび・土工工事)、塗装工事事業
取材日:令和3年6月24日

特に配慮している事項

総合建設業として公共工事から民間工事まで幅広い事業を行なっています。「思いやり・信頼・感謝」を企業理念とし、協力業者および社員とも家族のような密接な関係性を築き上げています。異変にいち早く気付ける関係性を活かし、熱中症を未然に防ぐ環境作りや指導に取り組んでいます。

基本的な取り組み事項

  • 正確な知識と深い人間関係で万全の備え。
  •  熱中症予防指導員研修を積極的に受講し、独自に作成したポスター、教育資料を普及。
  •  従業員や下請会社の社員とは同じ建物に住み、朝晩の食事なども一緒で、家族のような付き合いなので日頃から密接なコミュニケーションがとれている。
  •  熱中症予防に関する研修の受講に励み、積み重ねた熱中症に関する知識を生かし、わずかな変化も見逃さずに適切に対処できるように備えている。
  •  人間ドックおよび健康診断の結果を確認して要所見の人については現場の仲間が注意して目を配り、少しでも異変がある場合には休ませる/午前中のみで帰宅させるなどの対応を行なっている。

教育資料:熱中症未然防止キャンペーン

1.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 小規模な現場が多いが、可能な範囲で休憩場所の設置に努め、休憩場所には業務用扇風機や冷蔵庫を置くようにしている。例えばプレハブ休憩所を設置したり、建設中の建物の1階に設置するなど工夫しているほか、設置が難しい場合は日陰を作ったり、冷房を付けた車で休ませたりしている。
  • 建設物の各フロアにはクーラーボックスを置いている。
(2)作業管理
①暑熱順化
  • 暑熱順化する方法や暑熱順化を失わないための方法などについて、独自に資料や啓発ポスターを作成して周知している。
  • せっかく獲得した暑熱順化を失ってしまわないように注意喚起を行っている。
  •  しっかり入浴することやウォーキングを行うなど、暑さに体を慣らす工夫をするよう推奨。
②水分及び塩分の摂取
  • 休憩場所には、扇風機/塩飴/保冷剤/経口補水液/体温計/血圧計を会社で購入し、常備している。
  • 休憩時間を見計らって、アイスや水で冷やしたタオル/凍らせたタオルを配りながら声掛けし、体調を確認している。
  • ウォータージャグを各作業現場に配備している。
③服装等
  • ファン付き作業服を配布しているが着用は好き嫌いがあるので強いてはいない。
④作業中の巡視
  • 毎日4回の巡視を行い、声掛けをして会話ができるかなど、体調チェックを行なっている。従業員とは毎日一緒の仲間であり、家族のような付き合いをしているので、従業員同士の目配りが巡視強化に繋がっている。
(3)健康管理
①日常の健康管理等(労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認を含む)
  • 毎朝、全従業員を対象にツールボックスミーティングを実施している。
(4)労働衛生教育
  • 毎夏前(令和3年は7月5日の週)の安全大会で熱中症予防のために、独自に作成した資料・ポスターで教育している。

安全大会の様子

(5)救急処置
  • 手のつり・しびれがある段階を熱中症の予兆と捉え注意している。それらの初期症状がみられる場合は、すぐに休ませて塩分・水分摂取を指示している。
  • 異変がある場合は、躊躇なく救急車を呼ぶこととしている。

(2)建設業(鉄筋工事業)

本社所在地:埼玉県三郷市
取材地:同上
従業員数:50~99名
事業概要:建築用鉄筋の加工・運搬・組立を行う鉄筋専門工事
取材日:令和3年8月6日

特に配慮している事項

鉄筋製造業を営む「鉄筋のエキスパート」です。創業以来、「日本一安全な企業を目指す」をモットーに、一貫して安全・品質の確保を追求しており、その志は、熱中症対策にも活かされています。例えば、鉄筋加工の作業現場はコンクリートで打設された屋外にあり、鉄筋は熱を帯びた状態で運搬・搬入され、そのまま炎天下に保管されているため非常に高熱です。環境整備や常日頃のコミュニケーションの取り方など細かいところまで指導しています。

基本的な取り組み事項

  • 一人ひとりの熱中症対策を徹底。
  •  社長を先頭に『熱中症は事故ではなく疾病、それも死に至る事もある大変恐ろしい疾病である』という認識のもと作業場所だけではなく、従業員全員で熱中症対策に取り組んでいる。
  • 密なコミュニケーションを力に。
  •  小規模であることを活かし、管理者から常に密接なコミュニケーションを行い、従業員の体調管理を徹底している。
  •  日頃からお互いの健康を気遣う関係性を作り上げることにより、自らの体調不良を申告しやすい雰囲気になるよう職場作りを心掛けている。

1. WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • 代表地点だけでなく作業現場ごとに、管理者が黒球付きWBGT指数計で測定している。
  • 鉄筋の保管場所は、他の作業場所よりもWBGT値が高い傾向があった。

資材保管場所の工夫

(2)WBGT値に基づく評価等
  • WBGT値が高い場合は休憩時間を増やす。
  • 作業員一人ひとりの持病や当日の体調などの健康状態を勘案した熱中症予防対策を講ずるため、可能な限り作業シフトの組み換え等を実施している。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 休憩場所はエアコンのある食堂で、冷蔵庫には麦茶、スポーツドリンク、経口補水液を、冷凍庫には保冷剤も常備している。
    (場合によっては更衣室のエアコンも稼働させている。)
  • 屋外に屋根付きの休憩場所が用意され、ミスト扇風機が設置されている。
  • 屋外の鉄筋切断機械前に簡易の屋根を取り付け、日陰を確保している。

休憩場所の設置

(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • WBGT値が高い場合は休憩時間を増やす対策を行っている。
  •  通常: 10:00~10:15、12:00~13:00、15:00~15:15(合計:1.5時間)
  •  追加: 11:00~11:15、14:00~14:15(合計:0.5時間)
  •  総計30分休憩時間を増やす。
②暑熱順化
  • 暑くなる前に、暑さに体を慣らす工夫(発汗を促すような運動等)を心掛けるよう職長が声掛けをしている。
③水分及び塩分の摂取
  • 従業員入社時に個人用の水筒を支給し、現場での飲水を促すことにより、水分補給に努めている。
    (麦茶は食堂に無料で用意されており、製氷機も完備している。)
  • 始業前に塩飴を口に含むことにより、塩分も摂取するよう工夫している。
    (以前は梅干しを用意していたが、外国人技能実習生にも受け入れやすいよう塩飴に変更。)
④服装等
  • 通気性の良い衣服や、ファン付き作業服を支給している。
  • ヘルメットに日よけ用の布を採用している。
⑤作業中の巡視
  • 工場長が1時間おきに作業巡視を行い、顔色や汗の量を目視で確認している。さらに声掛けを行い、反応を見て異常がある場合は、休憩場所で保冷剤等を使って体を冷却する等、適切に対応している。
(3)健康管理
①日常の健康管理等(労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認を含む)
  • 本社事務所入り口に、サーモグラフィー体温計を設置。
  • 毎日、朝の挨拶や朝礼で健康状態を確認している。
  •  『朝食を食べましたか?』『昨夜はよく眠れましたか?』というような単純に「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、『朝食に何を食べましたか?』『昨夜は何時に寝ましたか?』のように、より対話ができるよう問い方を工夫している。
(4)労働衛生教育
  • 仲間同士互いに助け合うことの必要性や休憩を多めにとるのは熱中症対策として有効であることを理解するよう教育している。
(5)救急処置
  • 体調の異変に気付いたときは、①休憩場所に移動させ、保冷剤で体を冷却、②経口補水液を飲ませる、③速やかに工場長他、職長に報告・相談する、という応急措置についての知識を徹底共有して、重症化を防ぐ取り組みを行っている。
(6)管理体制の整備
  • 社長を先頭に『熱中症は事故ではなく疾病、それも死に至る事もある大変恐ろしい疾病である』という認識のもと作業場所だけではなく、従業員全員で熱中症対策に取り組んでいる。
  • 小規模事業者ならではの良さを生かし、熱中症防止のため、従業員へこまめに対応している。
  • 朝の出社時の挨拶や朝礼等で、管理者の方から積極的に、日々密にコミュニケーションを取ることにより、従業員の体調管理を徹底するとともに、従業員が自らの体調不良を申告しやすい雰囲気になるような関係性、職場作りを心掛けている。
  • 小規模事業所であることによる良好な関係性を強みとして、従業員同士が助け合う意識を挨拶時や朝礼などで日頃から共有し、お互いの体調管理への理解を徹底している。

(3)建設業(左官工事業)

本社所在地:神奈川県川崎市
取材地:同上
従業員数:100~299名
事業概要:左官工事業(総合建設工事請負、左官工事請負等)
取材日:令和3年6月28日

特に配慮している事項

神奈川県下トップの左官技術を持つ建設会社であることを自負し、注文住宅や公共施設の施工に対応してきました。熱中症対策予防策として、従業員の健康維持に注力し、企業としての社会的責任を果たしています。

基本的な取り組み事項

  • 熱中症リスクの低減・回避の徹底。
  •  単独作業はリスクが高い為、特に高齢者や持病の有る作業者については二人一組で作業。
  •  熱中症が発生する作業現場では特に注意するよう指示・声掛け・準備。
  •  朝、10時・12時・14時に、管理者が職場巡視。
  •  声掛け指導や従業員の声を汲み取り、現場改善を実施。
  • 普段から救急に備える。
  •  軽度の熱中症や、熱中症が疑われる症状が見受けられた場合、躊躇なく救急車を呼ぶ。

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • 作業現場ごと、朝礼時・昼礼時に測定している。
(2)WBGT基準値に基づく評価等
  • 炎天下のスラブ上などでは、蓄熱・輻射熱等で熱中症が発生するおそれがある。スラブ上で作業する場合には、特に注意するよう声掛けや指示をして準備を怠らないよう作業員に伝えている。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 休憩場所にミストシャワーを設置している。
②休憩場所の整備等
  • 休憩場所を設けるスペースがない作業現場では、近隣のマンションや店舗などの一室を借り、休憩場所として使用する。
  • WBGT値の測定や掲示は元請が行うが、それを見て可能な範囲で熱中症対策を実施している。
(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • 現場の状況に応じて、現場責任者の判断で昼休憩を延長する(11:30~13:30)、休憩の頻度を増やす、夕方涼しくなってから仕事をするよう暑い昼間を休みにして終業時間を遅くするなどの対応をしている。元請から要請された仕事とのバランスが難しいが、元請との交渉の上で作業時間の調整を行っている。
②暑熱順化
  • 日頃から運動を習慣づけるよう指示している。
③水分及び塩分の摂取
  • 休憩場所に製氷機を常設し、塩飴を常備している。
④服装等
  • 最近のファン付き作業服は半袖タイプもあり、作業性も悪くなく、ある程度の効果が期待できると実感している。作業員自ら好んでファン付き作業服を着用している状況にある。自社職員には全員に配り、下請事業者に対しては安価で購入できるよう仲介を行っている。
  • ヘルメットの背中側に装着する日よけ用の布を装備している。
⑤作業中の巡視
  • 朝と10時、12時、14時に管理者が職場巡視する。その際に、声掛け指導、従業員の声を汲み取り、現場改善を行っている。疾患(持病)のある人、外国人(中国、ベトナム、インドネシア)、高齢者、新規入所者には特に注意している。
  • 単独作業はリスクが高いので、特に高齢者や持病の有る作業者については必ず二人一組で作業するようにしている。
(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 健康診断結果における持病の有無によって配置を考慮している。(高齢者、新規入所者についても同様)
  • 健康診断結果による配慮について、職長に連絡している。特に該当者については巡視の際などに『体調はどうか?』『食生活はどうか?』『酒を飲みすぎないように!』などの声掛けを実施している。
(4)労働衛生教育
  • 毎年の安全大会と日ごろのミーティング等で、熱中症リスクの低減・回避に関する教育を行っている。
(5)救急処置
  • 休憩場所で休憩すれば回復すると思われる程度であっても、昨今は救急車を呼んでも受入先がないことがあるので、手遅れにならないよう躊躇なく救急車を呼ぶようにしている。
  • “こむら返り”や“手足のしびれ”など軽度の熱中症や熱中症が疑われる症状が見受けられた場合、その時点で救急車を呼ぶこととしている。

(4)建設業(塗装工事業)

本社所在地:東京都新宿区
取材地:同上
従業員数:10名〜29名
事業概要:建築工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、左官工事業
取材日:令和3年7月9日

特に配慮している事項

新築工事(塗装・吹付工事など)やリフォーム・リニューアルの事業領域で、超高層ビル、ホテル、テナントビル、オフィスビル、マンションなど、さまざまな分野で多くの実績を積んできました。ビル内でも階層によって作業環境が異なる為、作業現場ごとの熱中症予防対策を行えるよう、すべての現場作業員の間で情報と知識を共有することにより、徹底したリスク低減を実施しています。

基本的な取り組み事項

  • 正しい知識と新しい情報で現場管理。
  •  ゼネコンの安全管理指導手順を現場従業員に徹底。
  •  外国人従業員にも母国語の冊子を配布し、安全衛生管理を徹底。
  •  経営者のみならず職長や社員も、「熱中症予防指導員研修」を受講。

「作業員基本教育」冊子
(日本語・中国語・ベトナム語..)

1. WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • WBGT値の測定は作業場所ごとに、作業開始前及び各休憩後の作業再開前に元請の安全責任者が行い、作業者に通知している。
  • WBGT値は作業場所ごとに、元請が測定し掲示も行っているが、自社でも手持ちの指数計で随時測定している。

作業場所ごとでWBGT値を測定している様子

(2) WBGT値に基づく評価等
  • 管理者(安全衛生役員及び安全衛生担当者)が、SNSのグループ発信機能を用いて、熱中症の危険度などを作業者全員の携帯電話に即時に一斉通報している。また、携帯電話の翻訳アプリにより、外国人労働者にも母国語で伝えている。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 扇風機や送風機などを用いて、通風及び換気を確保している。
(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • 休憩の間隔や回数を職長が判断し、調整している。
  • 作業者には水筒や塩飴を持参させ、随時水分・塩分補給をするように指導している。
②暑熱順化
  • 本格的な暑さを迎える前に、運動や散歩を促すなど、体を暑さに慣れさせるように指導している。
③水分及び塩分の摂取
  • 休憩場所には製氷機や塩飴などを置き、水分・塩分を摂取できるようにしている。
④作業中の巡視
  • 職長などが巡視して、作業者の状況を確認するとともに、声掛けをする事で作業者が申告しやすい環境を整えている。
  • 高層ビル建築現場では、高層階と低層階の現場の状況が大きく異なる場合があり、熱中症予防に必要な措置も異なることがあるので、巡視及びWBGT値の測定を確実に行っている。
(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 健康診断書を提出させて有所見者を判断し、必要に応じて新規入場時の配置転換を行っている。
(4)労働衛生教育
  • ゼネコンの安全管理の指導手順を現場従業員に徹底している。
  • 外国人従業員には熱中症予防対策に関する母国語の基本教育の冊子を配布し、安全衛生管理の徹底を行っている。
  • 経営者のみならず職長や社員も「熱中症予防指導員研修」※を受講している。
  • 経営者自ら、ゼネコンによる「職長・安全衛生責任者教育講師養成講座取得制度」を利用し取得している。
(5)救急処置
  • 体調不良(大量の発汗、めまい、筋肉痛など)の作業者を発見または当人からの申告があれば、作業を即時に中断させ、涼しい場所への移動や脱衣と冷却を行い、元請及び自社現場担当者に速やかに連絡する。
  • 熱中症の疑いのある作業者の身体を第一として、まずは救急措置を最優先で行う。
  • 体調不良時には、直ちに報告を行うルールを徹底させ、確認者または当事者から、元請及び職長安全責任者に連絡する。
(6)管理体制の整備
  • 日常会話により作業者との意思疎通を円滑にする雰囲気を作れるよう、日頃から声掛けや作業者からの申告を受けやすい環境整備を心掛けている。
  • KY(危険予知)活動を充実させている。

※「熱中症予防指導員研修」とは、建設業労働災害防止協会で実施する“建設業等における熱中症予防のための教育研修”のことである。

目次へ戻る