企業別取組事例(令和3年度)

職場における熱中症予防対策に取り組む各企業の参考となるよう、熱中症予防対策を行う企業の取組を収集し、事例としてまとめました。ここでは、小規模な事業所や現場でも比較的容易に取り組め、活用可能な事例をご紹介します。従業員の皆さまの熱中症のリスクの低減を図るため、ご活用ください。
各企業の詳しい取り組み内容はPDFでもご覧いただけます。

1目次:企業が取り組む熱中症対策

(1)建設業(総合工事業)

本社所在地:大阪府大阪市
取材地:4支社
従業員数:5,000名以上
概要:戸建・賃貸・分譲マンション、商業・物流施設等の企画・設計・施工・販売等

特に配慮している事項

国内有数の建築会社です。全国に所在する建築現場ごと、それぞれの地域、作業員ごとに判断して熱中症対策を行なっています。具体的には現場監督に権限を移譲し、現場の状況に即している的確な対策を実施しています。熱中症予防対策をしっかりと行うことで、作業員も安心して施工をできる環境が整備されているということから、協力会社にも好評を得ています。

基本的な取り組み事項

  • 日陰のある休憩場所の設置。
  • 足場利用の休憩場所の整備。
  • 着工した時点で日陰を作る。通電していない現場もあるため、まず日陰で休憩できるスペースを確保。
  • 作業場所ごとに課題を柔軟に解決。
    特に市街地の狭小物件等に適した対策を実施するために、現場監督の判断を優先している。
  • 基礎工事や外構工事、屋外給排水工事などの現場では、作業場所を遮光ネットで覆う日よけを作る。
  • 遮光ネットは敷地の端から端まで一定の高さを確保できているため、重機作業も可能。
  • 狭小現場における給水スペースの確保。
  • 現場の指定位置にガードマンボックスを設置し、その中にウォーターサーバー、塩タブレット、体拭きシート等を設置している。また、感染症予防対策のためのアルコール消毒液も設置。
  • 熱中症に関する注意事項などの掲示を実施。
    ※休憩場所とは別に設置している。
    ※ガードマンボックスは、風雨を防ぎ電源を確保できるというメリットがある。
    ※給水時は一人しか入れないため、結果として密になることも防げている。
  • 作業場所ごとに課題を柔軟に解決。
  • 特に小規模の現場では、現場監督の判断を優先し、現場に適した対策を実施。
  • 狭小地においては、常設の休憩場所確保が困難なため、休憩場所として移動式テントを設置し、遮光を行うとともに業務用扇風機を設置。

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • WBGT値を黒球付きWBGT指数計で測定している。
  • 設置型のWBGT指数計について今後の導入を検討している。(写真は現場でのWBGT値の実測例)
  • 測定値を小休憩時に職長及び作業員が確認できるように、設置場所を工夫している。
(2)WBGT基準値に基づく評価等
  • WBGT値が高い時の注意喚起方法:水分・塩分の摂取を30分又は1時間ごとにうなが し、職長が摂取記録を管理している。
  • 作業に先立ち、“炎天下での作業を中止”“作業中止”とするべきWBGT値の基準を定め、運用している。
  • こまめに休憩をとるようにしている。感染症拡大防止の観点から、作業員ごとに休憩時間を分散している。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①休憩場所の整備等
  • 休憩場所として、エアコンのあるプレハブ休憩所を積極的に導入している。
  • 狭小地においては既設の休憩場所を確保するが困難なため、休憩場所として移動式テントを設置して遮光を行うとともに、業務用扇風機の設置を行っている。
  • 現場事務所が設置できない狭小な現場では、テントに遮光シートやネットを張り、日陰の休憩場所を確保している。
  • 基礎工事や外構工事など、常設の休憩場所を設置できないような環境では熱中症の発症リスクが高いと考えられることから、敷地の一部にワイヤーと遮光ネットを用いた簡易的な休憩場所を設置している。高さを一定程度確保することで、重機作業時にも支障なく使用可能である。折りたたむことで強風時の対策も可能である。

屋外作業場所へ日よけとなる遮光ネットを設置
[使用物品]遮光ネット、ワイヤー、カラビナ、ハト目、単管、杭、クランプ、トラロープ
[この活動にかかった費用]
作業人工(設置・撤去)3人工×3時=3×20,000円×3/8=22,500円
材料費30m×224円/m=6,720円
合計29,220円

  • 休憩場所を作業現場の敷地内に設けることができない場合は、場外にアパートを借りて休憩場所として利用できるようにしている。
  • 施工する現場自体が狭い場合が多く、仮設事務所を作る余裕がないケースが多いため、日陰を確保する目的で現場に足場材料を利用した小屋を仮設で設置し、遮光ビニールで覆って、簡易的な休憩場所を作る取り組みをしている。
  • 休憩場所は足場材料を利用するため、簡単に設置でき、広さについても柔軟に対応可能である。(小さなものであれば、1間×1間程度であるため、狭小場所にも設置可能である)
  • 休憩場所には、ミスト扇風機、ベンチなどを設置している。
  • 休憩場所には冷水器、製氷機(現場による)を設置して冷たい飲料水の水分補給をいつでも無料でできるように工夫している。
  • いざという時の保冷剤として利用できるように、冷凍庫でペットボトルを凍らせたものを準備している。その他、瞬間冷却スプレー、経口補水液、塩分入りゼリー飲料、塩タブレット、非接触式体温計を設置している。
  • ミスト扇風機、業務用扇風機、冷水器、製氷機、飲料自動販売機なども設置している。基礎工事中などの日よけ対策として積極的に遮光シートを設置している。
    ※結果としてWBGT値を5℃下げることができた。
  • 作業員が身体を横にする場合は、自動車の中でエアコンをかけて休むようにしている。座席を利用することが多い。
  • 現場のプレハブ休憩所にはエアコン、冷蔵庫を設置し、塩飴、瞬間冷却シート、経口補水液などを常備している。近隣の借り上げアパートなどに事務所を設置している場合も同様とし、休憩場所として使用できるようにしている。
  • 排水施設を利用できる休憩場所では、シャワー場を設け、身体を冷却できるようにしている。
  • 作業場所に移動式のテントや市販品の日よけを設置して休憩場所を確保するようにしている。
  • 移動式テントは、アウトドア用を使用しているので、搬入の手間もかからない。
  • テント支柱又は単管に遮光ネットを取り付け、側面からの直射日光を遮っている。ミスト扇風機又は散水パイプを設置することもある。
(2) 作業管理
①作業時間の短縮等
  • 日陰で小休憩をとるように指示している。
  • WBGT値に応じて1時間に1回程度の休憩を取るよう指示をしている。感染症拡大防止の観点から、作業員ごとに休憩時間を分散している。
  • こまめに休憩をとるようにしている。感染症拡大防止の観点から、作業員ごとに休憩時間を分散している。
②暑熱順化
  • 長期休暇後など、身体が暑さになれていないときは、作業場所の隣にペットボトル飲料、塩分入りゼリー飲料を設置し、いつでも摂取できるように工夫している。
③水分及び塩分の摂取
  • 作業員に水分補給をしたかどうかをチェック表に記入させ、管理者が確認している。
  • 30分に1回程度の水分・塩分の摂取をするよう指示している。
  • 現場事務所として使っているプレハブ休憩所内に冷蔵庫(ドリンク、経口補水液、塩飴を常備)、ウォーターサーバーを設置している。
  • 設置が可能な現場では飲料自動販売機を設置する。
  • 1時間に1度、水分・塩分の摂取記録をとっている。
  • 熱中症予防対策のため、飲料自動販売機を設置した。定価よりも安いワンコイン(差額は熱中症対策費用として会社負担)で500mLのスポーツドリンクを購入できるようにして、水分・塩分の摂取を促進している。
  • 量:30分ごとに、250mLの水分・塩分入りゼリー飲料を同時に摂取
  • タイミング:日よけのできる場所での小休憩
  • 工夫している点:職長・工事担当者から全作業員に強制的に実施させている事
  • 少なくとも1時間に1~2回程度、水分・塩分を摂取するよう指導している。
  • 周囲に飲料自動販売機がない現場が多いため、ウォーターサーバーを設置している。

【記載内容】
■水分・塩分 摂取確認表の記載(30分間ごと)
現場名称、点検日、施工店名、業種、点検者(職長)、本日の熱中症注意事項、最高気温(℃)、WBGT値(℃)、
作業者名、朝食・昼食・8時~18時30分までの30分ごとの水分・塩分摂取欄
■熱中症予防チェック事項
①朝礼時に体調を確認した(睡眠・食事・発熱・飲酒etc.)
②本日のWBGT値が何℃か確認した(危険度のレベル確認)

  • WBGT値が高い場合は、現場監督の判断で15分ごとに水分・塩分摂取を呼び掛けている。
④服装等
  • ファン付き作業服の着用を推奨している。協力会社の作業員も着用するよう補助金制度を設けている。
⑤作業中の巡視
  • 工事担当者又は職長が、1時間に1回職場巡視している。その際、経験2年未満の作業員等には重点的に声掛けしている。
  • 1時間ごとの巡視では、声掛けして体調を確認している。
(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 入退場記録を記録して作業員の健康管理に気を付けている。
②日常の健康管理等
  • 作業員同士で、互いの身体状況に異常がないか気を付けるよう、コミュニケーションを図っている。
  • 高血圧と診断されている作業員は、毎朝入場時に血圧測定し、記録している。
  • 職場巡視の際に、全ての作業員の顔色を確認し、声掛けを行うことで体調不良者がいないか確認している。
(4)労働衛生教育
  • 朝礼時に熱中症予防対策の注意喚起をする。
  • 新規入所者に対して教育を行っている。
  • 月に一度の災害防止協議会と毎日の朝礼で繰り返し教育を実施している。
  • 内容:災害防止協議会においては、厚生労働省公表のデータなどを利用して熱中症に関する知識、対策などを説明
  • 時間:1時間程度
  • 工夫している点:全作業員に伝わっているか、内容伝達報告書で署名にて確認
  • 全作業員に災害防止協議会での教育内容が伝わっているかどうか、内容伝達報告書に署名させ、確認している。また、毎日の朝礼でも、熱中症予防について繰り返し説明している。
(5)救急処置
  • 顔を合わせるたびに体調について確認している。
  • 頭痛、吐き気、顔色が悪い、おかしな言動(ろれつが回っていない)、尿の色が濃いなど、熱中症の兆候・疑いがある場合は、躊躇なく救急車を要請する。施主にもあらかじめ同意を得ている。
  • 熱中症が疑われる場合は、すぐに救急車を要請する。
    (今年は軽症が1件発生、去年は0件)
  • 熱中症が疑われる場合は、すぐに救急車を要請し、病院で受診している。場合によっては入院させている。
(6)管理体制の整備
  • 作業員が自らの体調不良を申告しやすい雰囲気になるような関係性、職場作りを心掛けている。
  • 作業所長が職場巡視を行う際には、特に、黄色のヘルバンドを装着することとしている、本作業場での経験が2年未満の作業員に対する声掛けと顔色確認を欠かさず行うとともに、当該作業員からも作業所長に対し積極的に声を掛けてもらうようにしている。

※ 「ヘルバンド」とは、ヘルメットに取り付けるタイ(帯)のこと。作業員の状況を識別できるようにしたもの。

(2)建設業(とび工事業・土工・コンクリート工事業)

本社所在地:東京都狛江市
取材地:同上
従業員数:10~29名
概要:建設業(建築工事、土木工事、とび・土工工事、ほ装工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、内装仕上工事、水道施設工事、塗装工事、防水工事)
取材日:令和3年6月24日

特に配慮している事項

小規模な組織であることを活かして、一人ひとりの健康状態及び作業現場の特性に合わせた熱中症予防対策をきめ細かく実施しています。中でも、コンクリート打設作業現場や風通しの悪い場所での長時間作業は、熱中症リスクが高いと考えられるので中でも、注意をして対策しています。

基本的な取り組み事項

  • 現場の一体感で対策強化。
  •  過去の災害事例は会社の財産という認識のもと、社長自ら再発防止に向け対策を講じている。
  •  会社ネーム入りのファン付き作業服を購入し、従業員はもとより下請作業員分に対しても無償で提供している。
    (同じネーム入りの作業服を支給することで、作業現場での一体感が醸成された)
  •  小規模作業場であることを勘案して、職長に休憩時間の変更等の権限を与え、きめ細かな作業員の体調管理を行っている。
  •  有資格者一覧及び有所見者一覧表を利用し、作業員の適正配置を行っている。

1.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 作業現場においては原則として元請が冷水機、製氷機、グリーンカーテン、ミスト扇風機、業務用扇風機を用意しており、それを活用している。自社が元請工事の場合は上記機器の設置についてレンタルで対応している。
(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • WBGT値が高い場合は休憩時間を調整する。
    例えば、午前10:00~10:30の休憩を9:00~9:10、10:00~10:10、11:00~11:10に分割している。
  • 小規模作業場であることから、作業員個人個人に適した対策を講ずるため、職長に休憩時間の変更等の権限を与え、きめ細かく体調管理を行っている。
②水分及び塩分の摂取
  • 塩飴を会社で用意して作業者に支給している。
③服装等
  • 会社のロゴ入りのファン付き作業服を購入し、従業員はもとより下請作業員に対しても無償で提供している。
    (同じロゴ入りの作業服を支給する事で、現場作業での一体感が醸成された。)

ファン付き作業服(会社のロゴ入り) ※社名はマスキングしております。

(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 有資格者一覧及び有所見者一覧表を利用し、作業員の適正配置を行っている。
(4)労働衛生教育
  • 元請主導により、マンガ、チェックリスト、絵、ポスター等を用いて30分程度、労働衛生教育を定期的に実施している。
(5)救急処置
  • 万一の時に備え、社員に救命技能認定の資格を積極的に取得させている。
  • 体調不良者がでた場合は、元請に速やかに報告して指示を仰ぎ、個人の判断で帰宅等しないように指示している。

※「救命技能認定」とは、一定の講習(応急手当やAEDの使い方等)を修了すると得られる資格のことである。

(6)管理体制の整備
  • 『過去の災害事例は会社の財産』という認識のもと、社長自ら再発防止に向け対策を講じている。

(3)業種:建設業(とび工事業・土工・コンクリート工事業)

本社所在地:神奈川県藤沢市
取材地:同上
従業員数:50~99名
事業概要:解体工事業、建築工事業(とび・土工工事)、塗装工事事業
取材日:令和3年6月24日

特に配慮している事項

総合建設業として公共工事から民間工事まで幅広い事業を行なっています。「思いやり・信頼・感謝」を企業理念とし、協力業者および社員とも家族のような密接な関係性を築き上げています。異変にいち早く気付ける関係性を活かし、熱中症を未然に防ぐ環境作りや指導に取り組んでいます。

基本的な取り組み事項

  • 正確な知識と深い人間関係で万全の備え。
  •  熱中症予防指導員研修を積極的に受講し、独自に作成したポスター、教育資料を普及。
  •  従業員や下請会社の社員とは同じ建物に住み、朝晩の食事なども一緒で、家族のような付き合いなので日頃から密接なコミュニケーションがとれている。
  •  熱中症予防に関する研修の受講に励み、積み重ねた熱中症に関する知識を生かし、わずかな変化も見逃さずに適切に対処できるように備えている。
  •  人間ドックおよび健康診断の結果を確認して要所見の人については現場の仲間が注意して目を配り、少しでも異変がある場合には休ませる/午前中のみで帰宅させるなどの対応を行っている。

教育資料:熱中症未然防止キャンペーン

1.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 小規模な現場が多いが、可能な範囲で休憩場所の設置に努め、休憩場所には業務用扇風機や冷蔵庫を置くようにしている。例えばプレハブ休憩所を設置したり、建設中の建物の1階に設置するなど工夫しているほか、設置が難しい場合は日陰を作ったり、冷房を付けた車で休ませたりしている。
  • 建設物の各フロアにはクーラーボックスを置いている。
(2)作業管理
①暑熱順化
  • 暑熱順化する方法や暑熱順化を失わないための方法などについて、独自に資料や啓発ポスターを作成して周知している。
  • せっかく獲得した暑熱順化を失ってしまわないように注意喚起を行っている。
  •  しっかり入浴することやウォーキングを行うなど、暑さに体を慣らす工夫をするよう推奨。
②水分及び塩分の摂取
  • 休憩場所には、扇風機/塩飴/保冷剤/経口補水液/体温計/血圧計を会社で購入し、常備している。
  • 休憩時間を見計らって、アイスや水で冷やしたタオル/凍らせたタオルを配りながら声掛けし、体調を確認している。
  • ウォータージャグを各作業現場に配備している。
③服装等
  • ファン付き作業服を配布しているが着用は好き嫌いがあるので強いてはいない。
④作業中の巡視
  • 毎日4回の巡視を行い、声掛けをして会話ができるかなど、体調チェックを行なっている。従業員とは毎日一緒の仲間であり、家族のような付き合いをしているので、従業員同士の目配りが巡視強化に繋がっている。
(3)健康管理
①日常の健康管理等(労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認を含む)
  • 毎朝、全従業員を対象にツールボックスミーティングを実施している。
(4)労働衛生教育
  • 毎夏前(令和3年は7月5日の週)の安全大会で熱中症予防のために、独自に作成した資料・ポスターで教育している。

安全大会の様子

(5)救急処置
  • 手のつり・しびれがある段階を熱中症の予兆と捉え注意している。それらの初期症状がみられる場合は、すぐに休ませて塩分・水分摂取を指示している。
  • 異変がある場合は、躊躇なく救急車を呼ぶこととしている。

(4)建設業(鉄筋工事業)

本社所在地:埼玉県三郷市
取材地:同上
従業員数:50~99名
事業概要:建築用鉄筋の加工・運搬・組立を行う鉄筋専門工事
取材日:令和3年8月6日

特に配慮している事項

鉄筋製造業を営む「鉄筋のエキスパート」です。創業以来、「日本一安全な企業を目指す」をモットーに、一貫して安全・品質の確保を追求しており、その志は、熱中症対策にも活かされています。例えば、鉄筋加工の作業現場はコンクリートで打設された屋外にあり、鉄筋は熱を帯びた状態で運搬・搬入され、そのまま炎天下に保管されているため非常に高熱です。環境整備や常日頃のコミュニケーションの取り方など細かいところまで指導しています。

基本的な取り組み事項

  • 一人ひとりの熱中症対策を徹底。
  •  社長を先頭に『熱中症は事故ではなく疾病、それも死に至る事もある大変恐ろしい疾病である』という認識のもと作業場所だけではなく、従業員全員で熱中症対策に取り組んでいる。
  • 密なコミュニケーションを力に。
  •  小規模であることを活かし、管理者から常に密接なコミュニケーションを行い、従業員の体調管理を徹底している。
  •  日頃からお互いの健康を気遣う関係性を作り上げることにより、自らの体調不良を申告しやすい雰囲気になるよう職場作りを心掛けている。

1. WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • 代表地点だけでなく作業現場ごとに、管理者が黒球付きWBGT指数計で測定している。
  • 鉄筋の保管場所は、他の作業場所よりもWBGT値が高い傾向があった。

資材保管場所の工夫

(2)WBGT値に基づく評価等
  • WBGT値が高い場合は休憩時間を増やす。
  • 作業員一人ひとりの持病や当日の体調などの健康状態を勘案した熱中症予防対策を講ずるため、可能な限り作業シフトの組み換え等を実施している。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 休憩場所はエアコンのある食堂で、冷蔵庫には麦茶、スポーツドリンク、経口補水液を、冷凍庫には保冷剤も常備している。
    (場合によっては更衣室のエアコンも稼働させている。)
  • 屋外に屋根付きの休憩場所が用意され、ミスト扇風機が設置されている。
  • 屋外の鉄筋切断機械前に簡易の屋根を取り付け、日陰を確保している。

休憩場所の設置

(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • WBGT値が高い場合は休憩時間を増やす対策を行っている。
  •  通常: 10:00~10:15、12:00~13:00、15:00~15:15(合計:1.5時間)
  •  追加: 11:00~11:15、14:00~14:15(合計:0.5時間)
  •  総計30分休憩時間を増やす。
②暑熱順化
  • 暑くなる前に、暑さに体を慣らす工夫(発汗を促すような運動等)を心掛けるよう職長が声掛けをしている。
③水分及び塩分の摂取
  • 従業員入社時に個人用の水筒を支給し、現場での飲水を促すことにより、水分補給に努めている。
    (麦茶は食堂に無料で用意されており、製氷機も完備している。)
  • 始業前に塩飴を口に含むことにより、塩分も摂取するよう工夫している。
    (以前は梅干しを用意していたが、外国人技能実習生にも受け入れやすいよう塩飴に変更。)
④服装等
  • 通気性の良い衣服や、ファン付き作業服を支給している。
  • ヘルメットに日よけ用の布を採用している。
⑤作業中の巡視
  • 工場長が1時間おきに作業巡視を行い、顔色や汗の量を目視で確認している。さらに声掛けを行い、反応を見て異常がある場合は、休憩場所で保冷剤等を使って体を冷却する等、適切に対応している。
(3)健康管理
①日常の健康管理等(労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認を含む)
  • 本社事務所入り口に、サーモグラフィー体温計を設置。
  • 毎日、朝の挨拶や朝礼で健康状態を確認している。
  •  『朝食を食べましたか?』『昨夜はよく眠れましたか?』というような単純に「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、『朝食に何を食べましたか?』『昨夜は何時に寝ましたか?』のように、より対話ができるよう問い方を工夫している。
(4)労働衛生教育
  • 仲間同士互いに助け合うことの必要性や休憩を多めにとるのは熱中症対策として有効であることを理解するよう教育している。
(5)救急処置
  • 体調の異変に気付いたときは、①休憩場所に移動させ、保冷剤で体を冷却、②経口補水液を飲ませる、③速やかに工場長他、職長に報告・相談する、という応急措置についての知識を徹底共有して、重症化を防ぐ取り組みを行っている。
(6)管理体制の整備
  • 社長を先頭に『熱中症は事故ではなく疾病、それも死に至る事もある大変恐ろしい疾病である』という認識のもと作業場所だけではなく、従業員全員で熱中症対策に取り組んでいる。
  • 小規模事業者ならではの良さを生かし、熱中症防止のため、従業員へこまめに対応している。
  • 朝の出社時の挨拶や朝礼等で、管理者の方から積極的に、日々密にコミュニケーションを取ることにより、従業員の体調管理を徹底するとともに、従業員が自らの体調不良を申告しやすい雰囲気になるような関係性、職場作りを心掛けている。
  • 小規模事業所であることによる良好な関係性を強みとして、従業員同士が助け合う意識を挨拶時や朝礼などで日頃から共有し、お互いの体調管理への理解を徹底している。

(5)業種:建設業(左官工事業)

本社所在地:東京都台東区
取材地:同上
従業員数:30~49名
概要:左官工事、建築工事一式請負、建築改修工事等
取材日:令和3年10月7日

特に配慮している事項

「左官工事管理システム」を確立させ、左官工事の責任と権限を明確化するほか、多くの関連特許を所有するなど、建築工事の環境変化に即した事業を行っています。熱中症に対しても、最新の情報と知見をすべての従業員と共有し、作業現場でも独自の取り組みを行うなどの徹底した予防対策を実践しています。

基本的な取り組み事項

  • 職長教育の徹底。
  •  黒球付きWBGT指数計の取り扱い方法。
  •  WBGT値の基礎知識と対処方法。
  •  万が一、熱中症と思しき症状を発見した場合の元請との連携方法。
  •  コロナ禍での熱中症予防の安全衛生教育及び作業員指導方法について。
  • 定期的な作業員教育の徹底。
  •  熱中症のメカニズムと予防方法。
  •  過度のアルコール摂取および夜間不要不急の外出リスク。
  •  十分な睡眠時間確保の重要性。

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • 作業場所において、職長・安全衛生責任者が黒球付きWBGT指数計でWBGT値を1日4回(朝礼後、10:30(休憩後)、13:30(午後配置後)、15:30(休憩後))実測している。
  • 同一現場でも周囲環境で変化するWBGT値の確認は、現地で行う体制をとる。
(2)WBGT基準値に基づく評価等
  • WBGT値に対応した、こまめな休憩時間を設定し、職長から水分・塩分補給の指示を出している。
  • 職長の判断を元請に報告・相談し、工程調整した上で、リスクの低い作業に変更している。
  • 作業に先立ち、“炎天下での作業を中止” “作業中止”とするべきWBGTの基準を定め、運用している。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 職長会活動に積極的に参加し、元請と連携して換気設備、業務用扇風機等をこまめに稼働している。
(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • WBGT値に対応した、こまめな休憩時間を設定している。
  • 緊急時連絡ルートを定めている。
  • (職長⇒元請担当職員⇒元方安全衛生管理者⇒統括安全衛生責任者)
  • 熱中症が疑われる作業員が出た場合、軽傷と思われる場合であっても、職長判断での様子見や帰宅指示をさせず、ただちに元請を含め関係者に報告させる。
②水分及び塩分の摂取
  • 個人の判断に任せず、職長から定期的に水分・塩分補給の指示を出している。
  • 休憩場所には塩飴を常備し、期間限定ではあるが、カキ氷・スイカ・アイスキャンディー等を日替わりで用意している。
③服装等
  • 左官工事に適したベストタイプのファン付き作業服を支給している。これにより、長袖タイプと比べて作業性がよくなり、左官工事でよく起こる、手元の鋭利な工具類で袖を引っ掛けて服を破損するなどのトラブルが生じる心配がない。

作業風景(室内/ベランダ)

(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 産業医の指示を仰いでおり、健康診断における有所見者には特に丁寧に対応している。
②日常の健康管理等(労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認を含む)
  • 安全掲示板を設置し、現地でのKY(危険予知)活動に利用している。

1日4回の現地KY(危険予知)事項を掲示板で確認している例

(4)労働衛生教育
  • 安全大会や夏季の研修会で1~1.5時間程度、元請・協力会社から提供される講習資料に基づき熱中症の教育を実施している。(写真は教育の実施例)
  • 熱中症の正しい知識を取得させるための教育を定期的に行っている。
  • <職長への教育>
  •  黒球付きWBGT指数計の取り扱い方法。
  •  WBGT値の基礎知識と対処方法。
  •  万が一、熱中症と思しき症状を発見した場合の元請との連携方法。
  •  コロナ禍での熱中症予防の安全衛生教育及び作業員指導方法について。
  • <定期的な作業者への教育>
  •  熱中症のメカニズムと予防方法。
  •  過度のアルコール摂取および夜間不要不急の外出リスク。
  •  十分な睡眠時間(例えば6時間)確保の重要性。
  • 所属する協会団体の発行する資料を活用して熱中症教育の充実を図っている。
  • WBGT基準値を全員が把握し、答えられるように教育している。例えば、左官作業は中程度代謝率に相当し、暑熱順化者28℃、暑熱非順化者26℃が基準値であるなど。
(5)救急処置
  • 緊急時の行動のルールを設けている。
  •  異常発汗反応、視点のちらつきなどの熱中症の予兆が見られる場合は、独断での行動や指示の判断はせずに速やかに元請に報告する。
(6)管理体制の整備
  • 安全掲示板を設置し、現地でのKY(危険予知)活動に利用している。

(6)建設業(左官工事業)

本社所在地:神奈川県川崎市
取材地:同上
従業員数:100~299名
事業概要:左官工事業(総合建設工事請負、左官工事請負等)
取材日:令和3年6月28日

特に配慮している事項

神奈川県下トップの左官技術を持つ建設会社であることを自負し、注文住宅や公共施設の施工に対応してきました。熱中症対策予防策として、従業員の健康維持に注力し、企業としての社会的責任を果たしています。

基本的な取り組み事項

  • 熱中症リスクの低減・回避の徹底。
  •  単独作業はリスクが高い為、特に高齢者や持病の有る作業者については二人一組で作業。
  •  熱中症が発生する作業現場では特に注意するよう指示・声掛け・準備。
  •  朝、10時・12時・14時に、管理者が職場巡視。
  •  声掛け指導や従業員の声を汲み取り、現場改善を実施。
  • 普段から救急に備える。
  •  軽度の熱中症や、熱中症が疑われる症状が見受けられた場合、躊躇なく救急車を呼ぶ。

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • 作業現場ごと、朝礼時・昼礼時に測定している。
(2)WBGT基準値に基づく評価等
  • 炎天下のスラブ上などでは、蓄熱・輻射熱等で熱中症が発生するおそれがある。スラブ上で作業する場合には、特に注意するよう声掛けや指示をして準備を怠らないよう作業員に伝えている。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 休憩場所にミストシャワーを設置している。
②休憩場所の整備等
  • 休憩場所を設けるスペースがない作業現場では、近隣のマンションや店舗などの一室を借り、休憩場所として使用する。
  • WBGT値の測定や掲示は元請が行うが、それを見て可能な範囲で熱中症対策を実施している。
(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • 現場の状況に応じて、現場責任者の判断で昼休憩を延長する(11:30~13:30)、休憩の頻度を増やす、夕方涼しくなってから仕事をするよう暑い昼間を休みにして終業時間を遅くするなどの対応をしている。元請から要請された仕事とのバランスが難しいが、元請との交渉の上で作業時間の調整を行っている。
②暑熱順化
  • 日頃から運動を習慣づけるよう指示している。
③水分及び塩分の摂取
  • 休憩場所に製氷機を常設し、塩飴を常備している。
④服装等
  • 最近のファン付き作業服は半袖タイプもあり、作業性も悪くなく、ある程度の効果が期待できると実感している。作業員自ら好んでファン付き作業服を着用している状況にある。自社職員には全員に配り、下請事業者に対しては安価で購入できるよう仲介を行っている。
  • ヘルメットの背中側に装着する日よけ用の布を装備している。
⑤作業中の巡視
  • 朝と10時、12時、14時に管理者が職場巡視する。その際に、声掛け指導、従業員の声を汲み取り、現場改善を行っている。疾患(持病)のある人、外国人(中国、ベトナム、インドネシア)、高齢者、新規入所者には特に注意している。
  • 単独作業はリスクが高いので、特に高齢者や持病の有る作業者については必ず二人一組で作業するようにしている。
(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 健康診断結果における持病の有無によって配置を考慮している。(高齢者、新規入所者についても同様)
  • 健康診断結果による配慮について、職長に連絡している。特に該当者については巡視の際などに『体調はどうか?』『食生活はどうか?』『酒を飲みすぎないように!』などの声掛けを実施している。
(4)労働衛生教育
  • 毎年の安全大会と日ごろのミーティング等で、熱中症リスクの低減・回避に関する教育を行っている。
(5)救急処置
  • 休憩場所で休憩すれば回復すると思われる程度であっても、昨今は救急車を呼んでも受入先がないことがあるので、手遅れにならないよう躊躇なく救急車を呼ぶようにしている。
  • “こむら返り”や“手足のしびれ”など軽度の熱中症や熱中症が疑われる症状が見受けられた場合、その時点で救急車を呼ぶこととしている。

(7)建設業(塗装工事業)

本社所在地:東京都新宿区
取材地:東京都新宿区(工事現場)
従業員数:10名〜29名
事業概要:建築工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、左官工事業
取材日:令和3年7月9日

特に配慮している事項

新築工事(塗装・吹付工事など)やリフォーム・リニューアルの事業領域で、超高層ビル、ホテル、テナントビル、オフィスビル、マンションなど、さまざまな分野で多くの実績を積んできました。ビル内でも階層によって作業環境が異なる為、作業現場ごとの熱中症予防対策を行えるよう、すべての現場作業員の間で情報と知識を共有することにより、徹底したリスク低減を実施しています。

基本的な取り組み事項

  • 正しい知識と新しい情報で現場管理。
  •  ゼネコンの安全管理指導手順を現場従業員に徹底。
  •  外国人従業員にも母国語の冊子を配布し、安全衛生管理を徹底。
  •  経営者のみならず職長や社員も、「熱中症予防指導員研修」を受講。

「作業員基本教育」冊子
(日本語・中国語・ベトナム語..)

1. WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • WBGT値の測定は作業場所ごとに、作業開始前及び各休憩後の作業再開前に元請の安全責任者が行い、作業者に通知している。
  • WBGT値は作業場所ごとに、元請が測定し掲示も行っているが、自社でも手持ちの指数計で随時測定している。

作業場所ごとでWBGT値を測定している様子

(2) WBGT値に基づく評価等
  • 管理者(安全衛生役員及び安全衛生担当者)が、SNSのグループ発信機能を用いて、熱中症の危険度などを作業者全員の携帯電話に即時に一斉通知している。また、携帯電話の翻訳アプリにより、外国人労働者にも母国語で伝えている。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 扇風機や送風機などを用いて、通風及び換気を確保している。
(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • 休憩の間隔や回数を職長が判断し、調整している。
  • 作業者には水筒や塩飴を持参させ、随時水分・塩分補給をするように指導している。
②暑熱順化
  • 本格的な暑さを迎える前に、運動や散歩を促すなど、体を暑さに慣れさせるように指導している。
③水分及び塩分の摂取
  • 休憩場所には製氷機や塩飴などを置き、水分・塩分を摂取できるようにしている。
④作業中の巡視
  • 職長などが巡視して、作業者の状況を確認するとともに、声掛けをする事で作業者が申告しやすい環境を整えている。
  • 高層ビル建築現場では、高層階と低層階の現場の状況が大きく異なる場合があり、熱中症予防に必要な措置も異なることがあるので、巡視及びWBGT値の測定を確実に行っている。
(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 健康診断書を提出させて有所見者を判断し、必要に応じて新規入場時の配置転換を行っている。
(4)労働衛生教育
  • ゼネコンの安全管理の指導手順を現場従業員に徹底している。
  • 外国人従業員には熱中症予防対策に関する母国語の基本教育の冊子を配布し、安全衛生管理の徹底を行っている。
  • 経営者のみならず職長や社員も「熱中症予防指導員研修」を受講している。
  • 経営者自ら、ゼネコンによる「職長・安全衛生責任者教育講師養成講座取得制度」を利用し取得している。
(5)救急処置
  • 体調不良(大量の発汗、めまい、筋肉痛など)の作業者を発見または当人からの申告があれば、作業を即時に中断させ、涼しい場所への移動や脱衣と冷却を行い、元請及び自社現場担当者に速やかに連絡する。
  • 熱中症の疑いのある作業者の身体を第一として、まずは救急措置を最優先で行う。
  • 体調不良時には、直ちに報告を行うルールを徹底させ、確認者または当事者から、元請及び職長安全責任者に連絡する。
(6)管理体制の整備
  • 管理者(安全衛生役員及び安全衛生担当者)が、SNSのグループ発信機能を用いて、熱中症の危険度などを作業者全員の携帯電話に即時に一斉通知している。その際、携帯電話の翻訳アプリにより、外国人労働者にも母国語で伝えられるようコミュニケーションツールを工夫して活用している。
  • 日常会話により作業者との意思疎通を円滑にする雰囲気を作れるよう、日頃から声掛けや作業者からの申告を受けやすい環境整備を心掛けている。
  • KY(危険予知)活動を充実させている。

※「熱中症予防指導員研修」とは、建設業労働災害防止協会で実施する“建設業等における熱中症予防のための教育研修”のことである。

(8)建設業(解体工事業・土木工事業)

本社所在地:埼玉県さいたま市中央区
取材地:埼玉県さいたま市北区
従業員数:10~29名
事業概要:土木工事、解体工事、造成工事等
取材日:令和3年8月25日

特に配慮している事項

土木工事・解体工事(一般住宅・ビルなどの各種構造物の解体)・造成工事を中心に事業を行っています。資格を有し高い技術を持つ社員を育成するとともに、それぞれの健康管理にも積極的に取り組み、作業場所に適した熱中症対策を実施し、確実な効果を挙げています。

基本的な取り組み事項

  • 作業内容に適した熱中症対策の積み重ねで確実な効果を発揮。
  •  無防備な屋外作業が行われないよう、日陰を作るための遮光シート、ミスト扇風機を設置している。
  •  解体工事は屋根のない屋外作業がほとんどであるため、解体作業用の重機は運転席にクーラーがついているものを採用している。
  •  屋内の休憩場所では、クーラーを稼働させ、良好な環境を整備している。冷凍冷蔵庫を設置し、飲料等の冷却を行っている。
  •  屋外に飲料自動販売機を設置している。

1.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • ミスト扇風機を導入している。
②休憩場所の整備等
  • 休憩場所に冷蔵庫、クーラーを設置している。
  • 屋内の休憩場所には空調を整備し、屋外のベンチには遮光シートをかけている。
  • 屋外に飲料自動販売機を設置している。
(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • 管理者が作業員に対して、こまめに休憩をとるよう指導している。
②水分及び塩分の摂取
  • 休憩場所に冷蔵庫、冷水、経口補水液、アイスキャンディー、塩飴・塩タブレットを用意している。
③服装等
  • ファン付き作業服など涼しい服装を推奨している。
④作業中の巡視
  • 管理者が作業員の顔色等を確認しながら巡視し、こまめに休憩をとるよう指導している。
(3)健康管理
①日常の健康管理等
  • 毎日、朝の挨拶や朝礼で健康状態を確認している。
  • “慣れ”による熱中症の兆候の見逃しを防ぐために、チェック表を導入し、朝の挨拶、朝礼・昼礼時に体調を確認している。
  • 屋外作業が多いので、職長は作業場所全体において熱中症のリスクが高い事を理解し、巡視の際には声掛けを行い、健康状態の確認を行っている。
(4)労働衛生教育
  • 熱中症予防の為に労働安全教育を実施している。
  • 作業現場には、熱中症の注意喚起の垂れ幕を設置している。
(5)救急処置
  • 特に顔色が悪い、発熱がある、などの場合は直ちにヒアリングを実施する。
  • 具合が悪そうならすぐに救急車を呼ぶ。
  • 熱中症対策応急セットを常備している。
(6)管理体制の整備
  • 小さな現場なので現場で働く者同士の挨拶、交流を心掛けている。

(9)建設業(解体工事業)

本社所在地:大阪府大阪市
取材地:東京都新宿区(解体現場)
従業員数:50~99名
概要:解体工事、建築工事、土木工事
取材日:令和3年9月10日

特に配慮している事項

設立時から解体工事のエキスパートとして、環境に配慮し、安全な施工を心掛け、これまで死亡災害ゼロの歴史を重ねてきました。熱中症対策においても常に作業員の健康状態に目を配り、設備や装備を充実させることでより安全な現場運営を行っています。

基本的な取り組み事項

  • 作業現場に休憩場所を設置(建設事務所に加え、解体中のビル内へも設置)。
  •  休憩場所を複数箇所設置(日陰のエリアに椅子や扇風機を設置)。
  •  作業員に体調管理シートを記載させ、提出させることを徹底。
  •  ヘルメットに日よけ用の布をつけることを義務化。

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • WBGT指数計にて測定し、朝礼時に周知している。
(2)WBGT基準値に基づく評価等
  • WBGT値に応じて休憩回数を増やしている。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • スポットクーラー、業務用扇風機、大型送風機を設置している。
  • 解体用の重機には冷房を完備している。
②休憩場所の整備等
  • 休憩場所は建設事務所に加え、解体中のビル内にも設置している。
    また、作業場所付近の木陰に椅子や扇風機を設置して臨時休憩できるよう整備している。
  • 冷蔵庫や製氷機、ウォータークーラーを設置している。

業務用扇風機・スポットクーラーを設置

(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • WBGT値が高い場合は、休憩回数を増やしている。
  •  午前:3回、午後:3回(1回につき15分)
②水分及び塩分の摂取
  • スポーツドリンクの粉末を常備し、休憩場所にていつでも水道を利用して溶かして飲めるようにしている。
  • 屋外に飲料自動販売機を設置している。
  • スポーツドリンクを作業中に配布してまわり、水分・塩分を摂取できているか確認を行っている。
③服装等
  • ファン付き作業服の着用を推奨している。
  • ヘルメットに日よけ用の布をつけることを義務化している。
④作業中の巡視
  • 職員が作業者へ声掛けを行い、顔色を確認している。
(3)健康管理
①日常の健康管理等
  • 自身及び職員同士で体調を確認し、熱中症が疑われる場合はエアコンの効いた涼しい環境に連れていき、脇を冷やしてスポーツドリンクを摂取させ、状態によっては病院へ連れていく。
  • 作業前・休憩後・作業後に体調の確認を行っている。
(4)労働衛生教育
  • 1か月に1回、15分ほど実施している労働衛生教育で、現場監督が前年度の発生件数や対策について、書面にまとめた上で分かりやすい教育を行っている。
(5)管理体制の整備
  • 声の掛け合いにより、業者の垣根を越えて話しやすい環境作りをしている。

(10)業種:建設業(土木建設業)・卸売業(建築資材業)

本社所在地:東京都渋谷区
取材地:同上
従業員数:50~99名
事業概要:建設資材業、建設請負業、建設発生土受入業
取材日:令和3年6月24日

特に配慮している事項

建設・鉄道基礎資材を扱う建設資材業と内外装、山留工事を主とした建設請負業を中心に事業展開しています。熱中症対策においては、土工事や山留工事で鉄板が敷かれている等、暑熱環境が厳しいことが想定されるので、日陰がない炎天下の屋外工事場所では、熱中症予防に関する注意喚起を行っています。また、元請企業との密接な関係性を基本に、最新のテクノロジーを積極的に取り込む一方で、人と人のコミュニケーションも重視する、柔軟な運営を心掛けています。

基本的な取り組み事項

  • 新規技術と声掛けで相乗効果を発揮。
  •  熱中症対策に関する情報収集に努め、最新の情報に基づく対応を実施。
  •  クラウド上のシステム(労務安全衛生に関する管理書類をクラウド上で確認する建設業向けITプラットサービス)を採用し、健康管理上の要注意事項や、安全確保対策等を管理。また、作業員名簿と適正配置通知書を必ず作業者に記載させて着工前に内容を確認。
  •  その他、新しい機器や装備など、有効と思われるツールを積極的に導入(現在、ウエアラブルデバイスの導入を検討中)。
  •  朝礼後のツールボックスミーティング(TBM)において、体調不良時に申し出ることや作業進捗よりも熱中症予防のための休憩確保が重要である旨を共有。また、睡眠確保や水分・塩分補給、休憩確保を徹底するため、熱中症対策シートを活用。
  •  作業の進捗よりも体調の方が大切ということを伝え、不調時には躊躇せず申し出ることなど、安全を最優先する体制作りに注力。

<検討しているウエアラブルデバイスの機能>
・通信不要、簡単操作、手首につなげるだけ、暑熱下でも使用可能な耐久力
・3ヶ月使い切り
・身体にどれだけ熱が溜まっているか、体がどれだけ熱を逃がしているかを測定できるセンサー付き

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • 元請が作業現場において測定・掲示したWBGT値を確認するよう作業員に指示している。

<掲示物>
・現在の気温・WBGT値(温度別の熱中症危険レベルや症状など)
・身体作業強度等に応じたWBGT基準値表
・WBGT値と気温、相対湿度との関係表
・熱中症の症状と分類表
・熱中症の応急措置(環境省熱中症予防サイト)
・緊急指定病院の案内図など

(2)WBGT基準値に基づく評価等
  • 基本的に元請の指示に従うが、WBGT値が高い場合には、10:00と15:00の休憩にこだわらず、あらかじめ柔軟に対応できるよう元請との協議により、こまめに休憩をとるように指導している。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 元請が設置した休憩場所には、クーラーや冷水機・製氷機、スポットクーラーや業務用扇風機が設置されている事が多い。
②休憩場所の整備等
  • 休憩場所を作業現場の敷地内に設けられない場合は、元請が用意する作業現場外の近傍で、マンションの一室などの休憩場所を利用している。

休憩場所や作業現場の環境整備

(2)作業管理
①作業時間の短縮等
  • WBGT値が高い場合には、10:00と15:00の休憩にこだわらず、元請との協議により、こまめに休憩をとるように指導している。
  •  例)通常の休憩時間:1時間(30分×2回)⇒午前2回と午後2回の各15分間×4回
②暑熱順化
  • 建設業労働災害防止協会のテキストなどを用いて、事前に暑さに慣れておくよう注意喚起するとともに、熱中症防止対策を心掛けるよう指導している。
  • 暑くなる前、例えば6月~7月は暑熱順化が十分ではないので、特に注意を喚起している。
③水分及び塩分の摂取
  • 職長会が休憩場所にかき氷機を設置した作業所もある。
④服装等
  • 社員にファン付き作業服を支給している。
  • ファン付き作業服の導入により、日々の疲労感が軽減された。また、休憩場所でも着用することにより、冷気が身体に直接入ってくるなど、休憩時の冷却効果があることが分かった。電池やファンの重さよりも涼しさという利点が勝っているので、下請の作業員も8~9割着用している。
  • 2年前に高通気性で清涼素材の作業服に変更。
⑤作業中の巡視
  • 各現場の担当課員が、請負工事の作業日に巡視している。
  • 下請の職長や作業員に声掛けし、顔色や体調の確認を行っている。
(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 適正配置通知書には健康管理上の要注意者の記入欄があり、これを基に就業上の配慮を実施している。
②日常の健康管理等(労働者の健康状態及び身体の状況の確認を含む)
  • 現場に入る作業員を管理するため、下請業者には、一般社団法人 全国建設業協会統一様式の作業員名簿と適正配置通知書などを必ず記載させている。
  • 作業員の健康状態を、作業開始前と昼にチェックシート(熱中症対策を含む)に記載し、飲酒量や食事の状況、睡眠時間なども確認している。
  • 下請作業員についても現場巡視時に健康チェックを行うとともに熱中症対策情報を提供している。
  • 安全衛生ミーティング日報・KY(危険予知)シートの裏面が熱中症防止のチェックシートになっており、元請が管理しているが、各現場の担当課員も巡視時に適宜確認している。

<熱中症防止チェックシート詳細>
①作業員チェック欄
・昨晩の状況
1.昨日の帰宅時間は
2.夕食は食べたか
3.水分は取ったか
4.お酒は飲んだか(飲酒量)
5.何時頃就寝したか
・今朝の状況
1.何時に起床したか(睡眠時間)
2.朝食は食べたか
3.朝礼が始まるまでに水分は取ったか
4.食欲はあるか
5.今日の体調は良いか
②職長チェック欄
(始業時・10時・昼休み・15時のチェック)
1.異常に汗をかいてないか
2.水分を十分に補給したか
3.体調(頭痛、痺れ、吐き気)に異常はないか
4.昼食はきちんと食べたか

(4)労働衛生教育
  • すべての作業員に熱中症対策の重要さを認識させるため、朝礼後のミーティング内で注意喚起を行っている。また毎月開催される災害防止協議会の安全衛生教育資料の配布や掲出により、大切な情報を簡潔に分かりやすく伝えるとともに、体調が何よりも大切であることを指導している。

(11)運輸業(港湾運送業)

本社所在地:神奈川県横浜市
取材地:東京都江東区
従業員数:1,000~4,999名
事業概要:港湾運送事業、海上運送事業、貨物利用運送事業、一般貨物自動車運送事業、倉庫業等
取材日:令和3年8月17日

特に配慮している事項

港湾運輸事業の大手企業です。重量物輸送の先駆けとして、船内やコンテナ内などの特殊な環境に応じた熱中症予防対策を行なっています。

基本的な取り組み事項

  • 作業内容に柔軟に対応。
  •  会社として元気な挨拶等のコミュニケーションが大事だという認識を持っており、パトロール時や朝礼時を含め、作業員の体調の変化をきめ細かく観察。
  •  作業員同士で相互確認し、異変に気付いたら直ちに責任者へ報告するよう指導。
  •  凍らせたペットボトル飲料および経口補水液を常時用意。

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • WBGT値を責任者が倉庫入口付近及び本船内において常時測定している。
  • 朝礼のタイミング及びアラームが作動した際に確認している。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 作業場所にスポットクーラーや業務用扇風機を設置している。
②休憩場所の整備等
  • 休憩場所にクーラー、飲料自動販売機を常設している。
(2)作業管理
①水分及び塩分の摂取
  • 休憩をこまめにとり、水分・塩分を摂取している。
  • 瞬間冷却スプレーなどを用意している。
  • 休憩時等に凍らせたペットボトルを握り、体温を下げている。
  • 上屋内の冷蔵庫で凍らせたペットボトル飲料および経口補水液を用意している。
②作業中の巡視
  • 職員及び作業会社の責任者が巡視を行い、作業者の顔色・行動の確認をしている。
  • 安全掲示板を設置して熱中症に関する注意喚起をしている。
    (特に高温部がある作業場所については注意を促している)

<安全掲示板(危険予知活動表)記載内容>
・日付/記入者
・グループの作業内容
・どこにどんな危険が潜んでいるか
・だから私達はこうします
・今日の行動目標
・グループ名/リーダー名/従業員数

(3)健康管理
①日常の健康管理等
  • 体温測定を義務付けている。
  • 毎日、朝礼や作業前ミーティングで健康状態の確認を行っている。
(4)労働衛生教育
  • 労働衛生教育を適宜行っている。
  • 熱中症予防の新しい情報がある場合には、その都度作業関係者にメールで共有するとともに、朝礼や作業前ミーティングで全員に教育している。
(5)救急処置
  • 緊急時には、直ちに救急車を呼ぶよう指導している。
  • 救急救命講習を受講している者が在籍している。
  • 熱中症キット(経口補水液、瞬間冷却スプレー、瞬間冷却剤)や塩飴を準備している。

熱中症キットの準備

(12)運輸業(港湾運送業)

本社所在地:神奈川県横浜市
取材地:東京都江東区
従業員数:300~999名
事業概要:港湾荷役事業、港湾貨物取扱事業等
取材日:令和3年7月12日

特に配慮している事項

主に港湾事業などの物流事業を積極的に展開し、創業70年以上物流のエキスパートとしての誇りを胸に、徹底した熱中症防止に取り組んでいます。

基本的な取り組み事項

  • 自発的な行動を支える環境整備。
  •  随時休憩できるように作業中の休憩場所として上屋内にビニールハウスを設置。
  •  喉が渇く前に水分・塩分を摂取するように指導している。

1.WBGT値(暑さ指数)の活用

(1)WBGT値の実測
  • 現場では黒球付きWBGT指数計を用いて2時間おきに測定している。

2.熱中症予防対策

(1)作業環境管理
①WBGT値の低減等
  • 陸揚げ機械の運転室にエアコンを装備している。
  • 作業場所(熱を持つ積み荷に水を掛けるための散水台)に日よけの屋根を設置している。
②休憩場所の整備等
  • 作業場所の近くの上屋内にビニールハウス製の簡易休憩場所を設置し、随時休憩できるようにしている。
(2)作業管理
①水分及び塩分の摂取
  • 事務所内の休憩場所には、冷凍冷蔵庫、塩飴を置いている。
  • 冷蔵庫には水や経口補水液を、冷凍庫には氷を常備している。喉が渇く前に水分を摂るように指導している。
②服装等
  • 希望者にファン付き作業服を支給している。また、作業性を考慮した袖のないベストタイプを採用している。なお、災害防止のため黄色の蛍光ラインを入れるなど工夫もしている。
③作業中の巡視
  • 体調や顔色などを確認するため、管理監督者が交代で巡視を行い、状況を把握するようにしている。
(3)健康管理
①健康診断結果に基づく対応等
  • 高血圧の人には毎日血圧を測るよう指導し、結果によって、その日の作業内容を考慮している。
②日常の健康管理等(労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認を含む)
  • 朝礼時に健康チェック、ラジオ体操を行い、夜勤前(18:30)にも状況確認のミーティングを実施している。
  • 朝礼時・昼礼時・巡視時に体調と顔色などを対面確認している。
  • 体調がすぐれない場合は、検温も行っている。
  • 体調が悪くても我慢してしまう作業員がいるので、業務中の体調不良にも早期に対応できるよう、単独作業はせずに、周りの人が注意できる体制を整えている。
  • 暑熱順化や暑熱作業への経験を重視し、他業種から入ってくるなど現場に不慣れの作業者に対しては、決して無理をさせないよう配慮している。
(4)労働衛生教育
  • 月一回、安全衛生会議を行い、熱中症予防対策に対する意識を高めて危機感を持つよう教育している。
  • 管理者・管理者候補に対し、作業員が熱中症になった時の対応等について、3~7時間程度教育を実施している。
(5)救急処置
  • 体調不良時の早期発見と初期対応を適切に行えるよう、管理監督者に救命救急講習を受講させており、必要な応急キットも完備している。
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