企業別取組内容(令和2年度)

職場における熱中症予防対策に取り組む各企業の参考となるよう、熱中症予防対策を行う企業の取組を収集し、事例としてまとめました。ここでは、小規模事業所や現場でも比較的容易に取り組め、活用可能な事例を特にピックアップしてご紹介します。従業員の皆さまの熱中症のリスクの低減を図るため、ご活用ください。
各企業の詳しい取組内容はPDFでご覧いただけます。

1企業が取り組む熱中症対策

事例1:鉄建建設株式会社(建設業)

熱中症リスクを高める要因

  • 日照と輻射熱が避けられない現場、休憩所が設定できない現場や上水道の設備がない現場等が存在
  • ジョイントベンチャー(JV)の場合、参画企業がそれぞれ独自の対策を講じ、現場全体が同一の熱中症対策を行いにくい

導入済対策

  • 大型送風機、ミストファン、クーラーの設置
  • ジョイントベンチャー(JV)各作業班職長が黒球式のWBGT指数計携帯、WBGT値が28℃超で「1時間おきに10分以上の休憩
    (クールダウンできるまで)」の基準を設定等

小規模事業所でも取り組みやすい対策

横臥可能なベンチの設置、梅雨明けや盆明けには休憩時間の多めの設定、作業終了時の検温の実施、単独での日照下での作業を避け複数人で作業を行い、互いに体調を気遣う等

狭小現場にパラソルとスポットクーラーを設置

狭小な現場の外注先警備員への配慮としてパラソルとスポットクーラーをレンタルし、組み合わせて熱中症リスク回避。現場近くにすぐ設置できて手軽

塩分とエネルギーの摂取補給に塩バナナを配布

冷やしたバナナに塩をかけたものを配布、塩分とエネルギーを効率よく摂取可能

事例2:村本建設株式会社(建設業)

熱中症リスクを高める要因

  • 地下の狭小な現場など、WBGT値の高値が継続しやすい状況下での作業あり
  • WBGT値が高い日が多すぎるため、毎日作業を中止すると、工期すら守れない現状

導入済対策

  • テント、スポットクーラー、ミストファン、日よけ、パラソル、プレハブ小屋、扇風機、冷水器、製氷機の設置、空調服の着用
  • 現場のWBGT値の掲示、確認によるリスクの共有等

小規模事業所でも取り組みやすい対策

簡易WBGT値指数計と測定値の掲示、新規入職者を朝礼時に紹介する機会を利用した注意の喚起、作業員同士の体調チェックのための「一声掛け合い運動」、休憩場所のエアコンの設定温度の外気温-5℃以内への調整等

自然の日陰を利用したテント設置

自然のロケーションを活かした場所にテントを設置

電源のない休憩場所にクーラーボックス入りの冷凍スポーツドリンクを常備

電源の引けない現場には、休憩場所に毎朝冷凍したスポーツドリンクを配布

事例3:株式会社セシム(警備業)

熱中症リスクを高める要因

  • 警備先の元請のルールに依存せざるを得ないため、自社のルールとの調整に苦慮
  • WBGT値が高い場合でも、作業車の出入が途切れることなくある等の状況により、休憩のために警備を中断できない場合あり

導入済対策

  • 元請との休憩場所の共同使用、駐車スペースがある場合は自社の車を配車し、休憩所として確保
  • 原則60歳以上で一人現場になる場合は空調服を支給
  • 人員の管制表をサーバーにアップし、熱中症リスクが高まった場合は管制表にて要警戒の情報を共有等

小規模事業所でも取り組みやすい対策

作業車を使った休憩所の配備、ヘルメットに装着する麦わらの庇(ひさし)やクールタオルの支給、一人現場には事務所から個別連絡・管理、始業時にアルコールチェック、健康配慮者には勤  務場所や時間を考慮、直行で現場に向かう人員に対しても飲料・アイス購入費を補助し、現場での飲料水確保を徹底等

道路工事用作業車を休憩所として使用

作業車内にサンシェードを取り付けることで断熱効果を高めつつ、車内をクーラーで冷やし、冷凍のスポーツドリンクや熱中症対策の塩分補給飴などを常備

ヘルメットに装着する麦わらの庇を採用

麦わら製で、中心部に穴が開いて(麦わら帽子のつばだけのようなもの)ヘルメットに被せるだけで簡単に装着できる庇(ひさし)を採用

事例4:JFEスチール株式会社(製造業)

熱中症リスクを高める要因

  • 構内の広さの割に、作業員数が膨大な数に上り、365日、24時間稼働
  • 高熱になる素材を扱う作業現場も多数あり

導入済対策

  • スポットクーラー、ミストファン、工場建屋外にクーラー付きプレハブ小屋、テントを設置
  • 安全マイスター制度、3~5月に行う社員教育、社内救急車等の整備

小規模事業所でも取り組みやすい対策

夏季に重点的に強化する作業現場のパトロール、災害事例と対策事例や専門家から提供された熱中症情報を作業員に伝達・指導、イントラネットを活用して熱中症関連の情報を集約、作業ごとに小型のWBGT値測定器の持ち出しや定置式測定器の設置

熱中症対策情報を社内用HPに集約

社内用のわかりやすい熱中症対策用のHPを作成。職場で使える教育資料、好事例の紹介、「温熱環境評価シート」などを格納し、社内ではいつでも閲覧・利用可能

「梅干し」「茎わかめ」を塩分補助食品に採用

熱中症予防用の塩分補給食品の採用にあたっては社員の希望を募り、産業医が塩分や糖分の含有量を評価して適切なものを選定。
糖分が相当量含まれる塩分補助食品もあるため、糖分の過剰摂取を避けるため、「梅干し」「茎わかめ」等の漬物も採用。

事例5:株式会社クボタ(製造業)

熱中症リスクを高める要因

  • 高熱物を扱う暑熱環境に加え、連続作業であるため、休憩交替がなかなか取りにくい場合あり
  • 社内調査にて熱中症のリスクの一要因ともなりうる朝食欠食の従業員が半数以上を占めることが判明

導入済対策

大型強力スポットクーラー、大型扇風機、ボックス型クーラー付き簡易休憩所の設置、マイクロバスを利用した休憩所の増設、休憩所には必ずベッドを設置

小規模事業所でも取り組みやすい対策

WBGT指数計の携帯、栄養士による熱中症予防食事メニューの開発・提供、朝食摂取推進セミナー、塩分補給用にキムチ提供

暑熱環境の職場にミストファン

高熱物を扱う暑熱環境にある職場にはミストファンを設置しWBGT値を低下

朝食欠食者の減少を目指してセミナー・朝食の配布

熱中症予防対策を兼ねた朝食推進セミナーを開催、夏季には啓発活動の一環として朝食を無料配布

2小規模事業所・現場でも取り組みやすい対策例

事例でご紹介した他に、小規模事業所でも比較的容易に取り組みやすいおすすめの熱中症予防対策をご紹介します。

この対策例はあくまでも一例です。作業現場の環境や個人の体調等によっては対策の期待した効果が得られない場合もありますので、導入の際には、WBGT指数計による計測や体調確認等を行うようにしてください。

休憩所の設置例

テント+すだれ+扇風機

テントにすだれ、扇風機を設置

テント+中空ボード+扇風機

小型テントと扇風機を設置し直射日光を避ける中空ボードで冷蔵庫を囲い、冷却効果をあげ、飲料等を効率よく冷却

足場+遮光シート+中空ボード

足場材で休憩スペースを組み、遮光シート、中空ボードを設置して直射日光を遮断

作業車+コンテナハウス

作業車に休憩用コンテナハウスを搭載し、現場の移動とともに休憩所も移動。コンテナ内はクーラー、冷蔵庫等を完備

出典:建設業労働災害防止協会,建設現場における暑熱環境の作業環境測定等に関する調査研究委員会 平成27年度検討結果報告書(平成28年3月)37頁 図39:休憩所(全景)

その他の対策例

熱順化ステッカーの活用

現場入場日を記載したステッカーをヘルメットに貼り付け、入場日から1週間は特に注意を払う。1週間経過後、上貼りされているステッカーをめくり、熱への順化を確認

熱中症に関する健康状態自己チェックシートの活用

作業前の朝礼時に作業者が健康状態チェックシートを活用し自らの体調をチェック
健康状態自己チェックシート例のPDFはこちら

水分等摂取状況の確認チェックシートと定期的な水分補給

のどが渇く前からこまめに水分を補給(20~30分ごとにコップ1~2杯程度)し、チェックシートで補給状況を記録
水分等摂取状況確認チェックシート例のPDFはこちら

フローズンシャーベット製造機の導入

スポーツドリンクをフローズンシャーベット状態にできる機械を導入、飲料より体温低下効果大

ミストファン

ミストファンを設置、ファンから2mの位置でミストファンによる濡れが軽減され、かつ効果も大で暑熱ストレスレベルの軽減効果あり

遮光シート+ロープで簡易日除け

直射日光を遮るため、ロープを渡してひもで遮光シートを取り付けた簡易な日除けを作成。作業場の移動に合わせ遮光シートも移動可能